私のドキュメンタリー 三上麻里
2012年01月30日 カテゴリー:オンラインレポート
先日土曜日、フジテレビ「サイエンスミステリー2012見えざる禁断の世界Ⅱ」にてシャム双生児のドキュメンタリーが放送された。カナダに住むタチアナとクリスタという五歳の姉妹。二人は頭部の繋がった「頭蓋結合体」という、数少ない結合双生児の例の中でも更に出生率の低い(出生全体に於いて、その出生率は100万分の0.6だという)形態で産まれてきた。
番組の内容は彼女達の生活と、それをフォローする家族や医師を追ったものだ。
彼女達を見て思った感想や、「番組側の彼女達への扱い」に対する私の思いについて書く事は敢えて省く。
自分がこの特集をCMで知り、まず最初に感じた感情は「日本でまだこのような題材を放送する事があるのか」という驚きであった。
日本のメディアについて、殊更テレビに関して個人的には「マイノリティーを排除する傾向が特に強い」媒体だと思っている。
そのテレビから、奇形という、現在特に敏感であろう題材を堂々と放送した事に驚きと、少し救いのようなものを感じた。
放送に敏感になる大きな理由の一つとして「実際に本人に近しい人、または同じ状況にある人を傷つける可能性」というものがある。
その理由を私が生々しく実感する事になったのは昨年3/11に起きた東日本大震災の被害状況のメディアの伝え方であった。
同じ場面を繰り返し流し続ける日本の報道に対し、他国では日本でまず放送される事のないような特に悲惨な場面を流す事もあった。
「ニュードキュメンタリー」の授業では、そのような海外と日本のメディアの報道の違いについて
「放送した国は、恐らく自国の事ではないから客観的にそのような場面を大きく放送する事が出来た。この被害がその国自身の事であったら、違った伝え方をしていただろう」という意見が出た。その意見に同意しつつも、それが報道として、そして見る側にとって良いのか悪いのかという事は私にはわからない。
今回放送されたドキュメンタリーとは別に、私は昨年の夏にタチアナとクリスタの事を知り一つ作品を作っていた。
「頭蓋結合体の為のガスマスク」
本革にて作成、双子の友人に装着してもらい写真撮影を行った。
私の作った物を見た彫刻の作家の一人に以前、「君の作品は人を傷つける可能性があるから、もし自分がグループ展をする事があっても君を誘う事はないだろう」と言われた事がある。
確かに、私には実際結合双生児の子供が居る訳でも近しい知り合いに似たような境遇に当てはまる人がいる訳でもない。勿論、自身がそうな訳でもない。
先ほどのメディアでいう所の「自分の事ではないから客観的になれる。もしこれが自分の事であったら、もっと違う表現していただろう」と同じ事なのだと痛く思う。それでも、タチアナとクリスタを知った直後は手を動かさずにいられなかった。
自身の作品は私にとって子供に限りなく近い存在である。
そうである以上私は覚悟と責任を持って制作し、人の目に触れさせ続ける。
「ドキュメンタリー」にも自身の「造形表現」にも通じる気質がある事に、授業を通じて気付かされたように思う。
彫刻 152025 三上麻里