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わたし/ニュードキュメンタリー  滝川おりえ 

中学、高校の頃、私は周囲の人やもの場所を熱心に写真に収めていたけれど上京して数年し、それらに目を向ける事に興味がなくなってしまった。

当時の熱烈さの所以は私の観ている世界や友人が私の前にちゃんとあることを片っ端から確かめるような行為だったように思う。

いっぽう都会の生活は座学から情報を得る事が多く当ても無く出歩く奔放さは少なくなってしまった。

事前に得られる情報から最良の行動を選択する、 そうやって選び取られた目の前の世界や人は私が写真に撮らなくても当然そこにあるものだと受け流し生活するようになった。

終わりの無い日常を生きるという錯覚を覚え、少し世界は色あせて見えてしまった。

私はとある事件をきっかけにまた写真を撮るようになった。

今住んでいる場所のごく近所で瓶入りのラジウムが発見され高い放射線を発していたという。

当たり前に日常を過ごしてきたけれど、その普通とは何ら安定したものではないのだと落胆する。

その事件をきっかけに再び私は街へ出て写真を撮るようになった。

私が撮る写真はもはや目前にある事を確かめる行為を超えて、見えていない悲しい現実すら 映し出す事ができるだろうか。

そこにラジウムがあろうとなかろうと、日常は難なく繰り返されるものではないのだと感じてしまった。

私にとってのニュードキュメンタリーとは目に見えている普通、積み重ねられてきたあらゆる枠外の出来事が簡単に崩れ落ちる予兆のようなものだと思う。



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