さあ、森の中の美大へ。
自然の中で造形を学び、
次の世界をつくる自分自身を見つけよう。
JR 横浜線の相原駅から歩いて程ない森の中に東京造形大学はあります。
学内に入ると、大学施設の建物以外はほとんど緑に囲まれており、特に美しい四季の移ろいを眺望できる学生食堂のテラスは、私のお気に入りスポットです。このキャンパスは建築家の磯崎新氏が自然と調和した設計を目指したもので、私たちはその恩恵を得た環境の中で、デザインや美術表現の制作と研究を行っています。
私は、本学が高尾の山の中に校舎があったころの絵画の卒業生で、版画を専門に学びました。版画は絵を版に分解して印刷する複製芸術です。印刷を正確に繰り返せば、ひとつの絵を多くの人と分け合うことができます。印刷は絵を記号に分解し刷り重ねることで情報に変えました。そしてこの技術は、大量の情報を生む時代をつくり、思想を広め社会を変えてきました。今日では、紙の上の情報は次々と電子化される時代になり、私たちは、複製された物と事に溢れた世界で日常を過ごしています。情報化社会の中では、別々の場所に居ながら同じ経験と記憶を持ち、共有した価値観を持つようになります。しかし、人は本来多様な価値観を持っているものです。自分のアイデンティティを持ち、自分が社会に対しどのような価値観を持つのか明らかにしていくことは大切なことです。
人は多くのことを自然から学んできましたが、ある時代からそれを複製物に置き換えることで高度な今日の社会を作ってきました。皆さんには、今一度足元に本当の自然を感じながら、人間的であることの意味を大事にして、幸せな未来を創造して欲しいと思います。
デザインや美術を通した造形の学びは、制作の繰り返しと人との出会いから多様な考えを得て人として成長し、社会に繋がる自分自身を見つけることです。
自然の示唆と人間の知恵が調和した本学の環境で、忘れられない人生の経験を得てください。
東京造形大学学長 生嶋 順理
主な経歴
生嶋 順理(いくしま じゅんり)
1993年4月1日着任。
東京造形大学卒業後、東京藝術大学大学院修了。
版表現による絵画制作と発表を行う。個展の他、クラコウ国際版画ビエンナーレ展(ポーランド)、ソウル国際版画展(韓国)、現代日本美術展、日本国際美術展などに出品。1988 年第12 回クラコウ国際版画ビエンナーレ展でメダル賞受賞。
作品は、町田市立国際版画美術館(東京)、東京国立近代美術館、国立クラコウ美術館(ポーランド)、ロサンジェルス・カウンティ美術館(アメリカ)などに収蔵。
東京藝術大学、東京造形大学で非常勤講師を務め、1993年から東京造形大学専任教員となる。版画学会では事務局長、会長を務めた。日本美術家連盟会員。