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研究科長挨拶

「誰かで終わらない」ために
自分の世界観や思想をカタチにし社会へ切り込め

 本学の大学院造形研究科造形専攻修士課程(デザイン研究領域・美術研究領域)は2005年に設置され、2015年には造形教育研究領域および博士課程が新設された。本学は1966年の開校以来、建学の精神に示されるように、デザインや美術の創造活動を時代精神や社会の形成と密接に関連づけてきた。中でも、東京五美術大学の中で、本学はとりわけ「社会性」を重視してきた美術大学である。

研究の姿勢と社会性について

 本大学院での研究は、たとえそれが自身の体験や問題意識など個人的な動機に基づくものであれ、あるいは使命感によって取り組まれるものであれ、自己満足的な「作品制作」や「研究のための研究」、あるいは「論文のための論文」に終始してはならない。魅力ある作品や優れた研究とは、社会に問題を提起し、議論を促し、共感を呼び起こし、社会課題や環境問題の解決に貢献し、新たな気づきを与え、新たな知や価値、文化、ライフスタイルを創出し、さらには社会の変革を促す力を持つものであるはずだ。
また、大学院における研究・制作には、将来デザイナー、表現者、教育者、あるいは研究者として社会に貢献するためのオリジナリティが求められる。そのような研究や制作を実現するには、短期的に役立つ技巧やノウハウをなぞるだけでは不十分である。専門知と横断知にまたがる深く広い知識を貪欲に吸収し、豊かな経験をもとに、自らの「世界観」や「思想」を確立することが必要である。

教養と世界観の確立の大切さ

 本来、学部段階においては、専門技術や知識に加えて、哲学、歴史、経済学、社会学、心理学、生態学、倫理学、文化人類学などの教養を幅広く学び、自らの思考の礎を築いておくべきである。しかし、学生と接する中で、教養を軽視し、卒業単位取得の手段としてしか捉えていない学生が少なくないと感じる。その結果、研究テーマの設定や制作の方向性に迷い、卒業制作に苦労した者も多いのではないか。今からでも遅くはない。大学院では、専門技術・知識を深めると同時に、教養の探究にも積極的に取り組むべきである。

現場体験と知の血肉化

 また、大学院においては学外の現場に積極的に足を運ぶことも重要である。研究テーマに関連する作家の展覧会や講演会、学会、勉強会、またはテーマに関連する活動を行っている組織へのインターンシップやプロジェクト参加など、大学やインターネットでは得られない学びと出会いが現場にはある。

知の蓄積とアウトプットの循環

 そうした現場体験を単なる「面白かった」で終わらせず、自らの考察をメタ的な視点から捉え、論理的に整理し、自分の言葉で言語化することが肝要である。その言語化された内容は、大学院の仲間に語るのもよいし、研究ノートやスケッチに記録してもよい。学内で報告会を開くのも一つの方法である。
呼吸が空気の吸入と排出の循環で生命を保つように、表現においても外界からのインプットと自らのアウトプットの循環が不可欠である。体験を内省的に咀嚼し、血肉化し、それを言葉や作品として外に出すことで、知的活動は初めて生命を得る。加えて、現場での多様な人々との出会いは、今後のデザイナー、表現者、教育者、研究者としての活動において、貴重な人的ネットワークとなるだろう。このようなダイナミズムの中で主体的に学ぶことにより、「知」が着実に蓄積され、自らの世界観や思想が明確な形を持ち、質の高い、独自性あふれる作品や研究が生まれるのである。

孤独な研究と努力の価値

 大学院の授業では、指導教員と密接に連携しながら専門的な研究を深める授業に加え、研究領域を越えて履修可能な「造形プロジェクト」や、デザイン・美術の理論を仲間とともに学ぶ授業が用意されている。一方で、大学院における研究生活は、時に孤独を伴うものである。自身の理念や考えをうまく言語化できなかったり、それが周囲に十分に伝わらなかったり、理解されないこともあるだろう。
それでもなお、着実に、粘り強く努力と挑戦を続けることが何よりも重要である。七転び八起き。努力は必ず実を結ぶ。この言葉を信じて、自らの研究に真摯に取り組み、誰かの模倣で終わらず、自分自身の思想と表現を社会へ向けて切り拓いてほしい。

東京造形大学大学院研究科長
岩瀬 大地

 


経歴

バックパッカーとして世界を放浪後に東京造形大学に入学。2003年東京造形大学造形学部デザイン学科卒業後にオランダのデザインアカデミーアイントホーベン大学院に留学。その後渡タイ。タイでは廃棄物問題や観光による環境問題を研究。2013年タイ国立マヒドン大学大学院環境資源研究科博士課程修了(Ph.D. in Environment and Resource Studies)。2015年に着任。

現在、一般社団法人Spedagi Japan理事, TZU DESIS Lab.のディレクター, ランシット大学(タイ)のJournal of Contemporary Social Sciences and Humanitieの編集委員, タイ国立キングモンクット工科大学トンブリ校建築デザイン学部客員研究員(2022年〜2023年), 四川美術学院(Sichuan Fine Arts Institute)International Joint Master program 招聘教授(2024年〜)。
主な著書に「竹自転車とサステナビリティ 世界の竹自転車づくりから学ぶサステナブルデザイン(風人社)」や「タイに学ぶSDGsモノづくり(めこん社)」がある。

受賞
環境省グッドライフアワード(2018年)、キッズデザイン賞(2019年)、グッドデザイン賞(2024年)、桑沢学園賞(2024年)

教員プロフィール・教育研究業績