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学生・関係者の活動 詳細

無主の地 No Man`s Land ――葉雨双個展


 

葉 雨双(YE YUSHUANG)
大学院美術研究領域 2025年度修了


無主の地 No Man`s Land

古代の思想伝統において、混沌はしばしば万物の起源とみなされてきた。『淮南子』においては天地未開の朦朧たる状態として、ギリシア神話においては宇宙の始まりにある虚無として、また現代科学の宇宙論においても、ビッグバン以前の高エネルギー密度の状態は、やはり「未分」と近似する様態である。秩序は混沌から析出し、同時に秩序そのものも新たな不確定性と逸脱を孕み続ける。混沌と秩序は単なる対立ではなく、相互に生起し循環する関係である。

葉雨双の制作は、この循環的な思考の中に展開される。彼女の画面は黒点、矩形、そして流動する色彩によって構成されることが多い。黒点は混沌の原点を象徴し、未知の中心であると同時に秩序の起点でもある。矩形や線は構造化された理性的な存在を示し、さらに偶発的に広がる色彩の塊や水の痕跡は、画布の上に新たな不確定性を生成する。画面は純粋な秩序でも完全な失序でもなく、張力の中で均衡を探り続ける動態である。

彼女はキャンバス上に粒子感をもつ地塗りを何層にも重ね、粗野で野生的な触感を画面に残す。色彩の流動や停滞には偶然の痕跡が刻まれ、その「制御不能性」こそが本展作品の重要な要素となっている。それは絵画の生成を宇宙自身の進化過程に近づけ、秩序をあらかじめ定められた到達点ではなく、偶然性と共働する結果として提示する。

「無主の地」とは、葉雨双が宇宙と個体との関係について行う思索である。宇宙の存在は人間的尺度から独立し、いかなる主体にも属さず、いかなる目的のためにも設えられてはいない。個体はその中で微小にして拠り所を失うが、まさにこの無主の境地においてこそ、自由と創造の可能性が開かれる。虚無は終極的な否定ではなく、むしろ逍遥を許す前提なのである。
彼女は答えを提示するのではなく、色彩・形態・肌理を通して存在についての感性的な隠喩を立ち上げる。私たちが対峙するのは完成されたイメージではなく、生成し続ける世界である。

混沌と秩序は交替しながら湧出し、虚無と自由は互いに映し合う。

テキスト執筆:胡 听雨 HU TINGYU


開催期間

2025年10月14日~2025年10月19日


休館日

なし


時間

13:00~19:00 最終日 17:00


入場料

無料・予約不要


会場

moon gallery&studio


会場住所

東京都台東区北上野2-3-13 北上野ダイカンプラザ1F moon gallery&studio