• Japanese
  • English
  • 在学生
  • 教職員
  • アクセス
  • 資料請求
  •  MENU
  • 在学生
  • 教職員
  • 大学について
  • 教 育
  • 学生生活
  • 進路・就職
  • 研究活動
  • 入学案内
  • 保護者の方
  • 受験生の方
  • 卒業生の方
  • 企業・一般の方
  • 大学院
  • 附属美術館
  • 附属図書館
  • ENGLISH SITE

学生・関係者の活動 詳細

2Ps - 「危機の(ない)」時代のパサージュ・パルタージュ


 

清水哲朗
絵画専攻領域 非常勤講師

他、8名
大和田愛子、秋山果凜、小林良一、祐成政徳、戸田祥子、長井美冬彩、東野哲史、松本春崇


<「2Ps」展通信 - その(8)>

「2Ps -『危機の(ない)』時代のパサージュ・パルタージュ」展では、CSギャラリーでの6/28(火)〜7/1(金)開催中の展示が、いよいよ最終展となりました。今回の展示では、先日6/18(土)開催の「パネルディスカッション」の進行も務めてくださった卒業生の作家、長井美冬彩さんよる特別出品作家としてのご参加をいただき、8名の出品作家での展覧会構成となりました。会場には、絵画、オブジェ、映像、音、紐による「縛り」、石積み、言語、漫画・・・など多様な要素が溢れています。そして活発に関わり合いながら、そこここで、生命力に満ちたクリエーション(創造)の現象が生み出されています。その様子は、今回の展覧会がテーマとした、Passge=パサージュ=抜け道=生きた道=道を生きる、Partage=共同-体 の姿そのものと言えるでしょう。全員の協力によって築かれた、このいつ果てるともしれない展覧会の、エピローグにふさわしい共同展示となりました。残りわずかの会期ですが、にぎやかで美しいこの共同-体展を、皆様ぜひご覧ください。以下に、今回の特別出品に際し述べられた、長井美冬彩さんの作家ステートメントを掲出します。

                                                2022年6月30日
                                                清水哲朗


<長井美冬彩さん作家ステートメント>

 私にとって絵を描くことと、他者とコミュニケーションを取ることへの感覚は、密接です。    私は私の人生で「最初に」絵を描いていたのではありませんでした。私より先にいた二人の姉と、母が絵を描いていたのです。ここでの絵とは、キャンバスやパネルの規格を選び、布や紙や絵の具や筆を選択し、どんな文脈を参照したか / 影響されたかを考え描かれるようなものではありません。チラシの裏に母が娘二人の好きなアニメキャラクターを模写したり、二人の娘が拙いながらも好きなものを描き、母に見せる。というような日常的なものです。そのような絵を介在させた彼女たちのコミュニケーションの中に、次第に私も入ってゆくことになったのです。語彙力も、身体能力も、三女である私は当然二人の姉たちに劣ります。普段の生活で彼女たちは私をかわいがってはくれても、対等に情報を交換したり、身体を伴った同じ条件での交流をすることはできませんでした。私には、同じ図像を共有することが、唯一対等に彼女たちと意思の疎通をする手段だったのです。だからでしょうか。私が絵を描くときはいつも、念頭にコミュニケーションに関する私の考察が入り込みます。絵によってコミュニケーションをはかるというよりも、その時点での私のコミュニケーションに関する考察を絵に描き留めるようなものです。また、私は言葉を言葉で、文字を文字で自分の中に取り入れたり、また、発することが苦手なようだと気がつきました。言葉や文字は、(無理矢理当てはめるなら)図形のようなものとして私に理解されます。そして、私が今現在しているように言葉にする時は、前述の図形のようなものから言葉に、文字に翻訳する作業が挟まります。どうやら言葉を言葉のまま理解し、そして言葉にそのままアウトプットできる人がいると感じることがあります。そんな言葉はとても明快で完成したパズルのようです。けれども、私にとって言語によるコミュニケーションは翻訳の繰り返しです。伝えたい図形に近い言葉を探し、当てはめてみて、こぼれた図形を拾い、言葉を一つ一つ見比べてみる。時には疲れてしまい、合わないパズルでも、無理矢理押し込めて繋げてしまうこともあります。

 今回、司会・進行をする中で多くの図形が空間に広がりました。私はその図形を知覚できても、そこに放置したまま、言葉にできないまま進行することになりました。 今回の作品《失われた私の一部を探す》では、その時の宙に浮いたままの図形を、言葉に翻訳して、また図形に置き換えることで制作しています。そのため、私が作家の皆さまや企画者の清水さんから受け取ったオリジナルの図形からは、キャンバス上のイメージは変わってしまっています。例えるならば、翻訳サイトで繰り返し日本語と日本語以外の言語を翻訳したような状態に近いのかもしれません。少しずつズレながらも、同時に散らばったイメージたちをキャンバスに押し込めました。

 言葉はとても便利な道具です。にも関わらず、言語でのコミュニケーションの間に私はいつも途中で疲れてしまいます。疲れると、図形があたりに散らばり、どれから言葉に変換するべきかわからなくなってゆきます。図形に言葉という形を与え、並び替えて、一つの線にする。他者と会話をする時、言葉による安心感も、そして緊張感も、私たちは常に持ち合わせ、組み合わせ、交換します。時には、そこから溢れてしまったけれど、伝えなければならないことも中空に漂います。うまく翻訳できずに進行する会話、コミュニケーション。私たちは言語に翻訳されたものからしか、情報を受け取ることはできません。私の頭の中に広がる、図形の浮かんだ空気を、人は読むことは出来ないのです。

 《失われた私の一部を見つめる》では、会場に展示したテキストを 2Ps の展示作家、企画者に渡しました。そして、骨の重さになるまで今回の展示に使用した何かをアクリルケースに入れて欲しいと依頼しました。これは 私の感覚からの解釈では、言葉を物質にするという翻訳をお願いしたことになります。私の言葉を受けて、何を思い、何を選び、どんな対応をするのか。その姿がコミュニケーションの一つの形として、アクリルケースの中に収められます。今回の展示作家・企画者との交流の「骨」は、どんな姿を見せてくれたのでしょうか。

長井 美冬彩 2022.6.28


上写真左:《失われた私の一部を探す》、2022、キャンバスに転写、油彩、24.2cm×33.3cm


上写真提供:東京造形大学企画広報課


開催期間

2022年5月10日~2022年7月1日


休館日

日曜日・6月27日(月)


時間

10:00 〜 16:30


入場料

無料


会場

東京造形大学附属美術館、ZOKEIギャラリー、CSギャラリー、10号館CS-PLAZA吹き抜け空間内、10号館横芝生


会場住所

東京都八王子市宇津貫町1556 東京造形大学<構内>