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学生・関係者の活動 詳細

2Ps - 「危機(のない)」時代のパサージュ・パルタージュ


 

清水哲朗
絵画専攻領域 非常勤講師

他、7名


<2Ps展通信 - その(7)>

小林良一さんの作品との出会いは、その頃担当していた美術雑誌の「展評」欄執筆のための展覧会探索の際だった。その頃は、月一回の評執筆のために、銀座の画廊街を、あちらへこちらへと歩き廻っていた。その月のベストと思う展覧会、作品を探し出さなければならなかった。多くの読者に、伝えられるべき作品を探し出さなければならないという使命感と、素晴らしい作品との偶然の出会いへの期待感と。1980年年代から90年代へ、バブル時代に開花した日本文化の最盛期に、学芸員として、過多とも思える展覧会の担当に忙殺されつつ廻っていた。その画廊巡りは、苦しくもあり、それ以上に息抜きでもあり、そして喜びでもあった。私は、何の予備知識もなく、その作品の真ん前に立って、響いてくるもの、そして本当に響いてくる作品を選ぶようにしている。可能な限り公平にそしてどこまでも厳しく行いたいと思っていた。一つの画廊に、入っていった。そこで出会った小林作品は、まず「とてもなめらか」な感じがした。このな「めらかさ」は、どこでも出会ったことがない、とその時感じた。色彩の用い方は、決して派手ではなく、むしろよく抑制されていると感じた。そしてそのような面のなめらかさと絵の具の用い方の向こうに、何か意志のようなものものが感じられてきた。多くの作品を巡り歩いていて、このような「意志」との出会いの感覚は以外と少ないものだ。「響き」ではなく、「意志」が感じられた。その後同じ大学で、同僚として長く仕事を共にするとは、もちろんつゆほども思わなかった、奇妙な縁である。けれども、今度は長い間、仕事を共にすると、初めて小林作品と出会った時の「意志のようなもの」の在り処が次第に分かってきたような気がする。小林良一先生は、決して否定せず、けれどもかなり辛口のことも学生たちに対してズバリと言う。けれどもいつもちょっとユーモアを込めて、柔らかな眼差しを込めて学生の皆さんたちを見つめながら。同じような柔らかく、しかも厳しい視線を、自らの画業と画面へ注ぎ続けてきたのではないだろうか。小林作品の1990年代作品の「なめらかな」表面は、その柔らかく執拗な眼差しの中でゆっくりと熟成され滋養されていったのだろう。決して急がないのだ。執拗に食い下がりゆっくりと絵の具と筆で、熟成されるのを待つ。卓抜な筆あとはフレッシュな息吹をいつも画面に与えているが。今回は、90年代から思い切って最近作へと至り、展示が展開された。「投網」ご本人が形容する「網状組織」が画面に登場した。本展に際して発表された新作では、その「網状組織」は内向し、絵画の内部を経巡ろうとしているかのように感じられてくる。ウクライナでの戦争の、蹂躙、不条理の影響もあるようだが。けれども、近年の画面上の「網状組織」は、90年代作品でも感じられていた「意志」のニュアンスの表れではないかと私には思えてくるのだ。その「意志」の「網状組織」は、90年代に比べれば、一見鮮やかな色相の対比を見せ、画面上そこここで、色彩を互いに照り映えさせ、画面に動的な視覚現象を起こしている。そのような画面上の同時多発的な視覚現象の上での結束の作用こそが、画面上の「網状組織」を誘発するのだろう。1990年代の「なめらかな」表面の中に潜んでいた強力な「意志」の存在は、2020年代の現在へと、むしろ華やかな色の「網状組織」として開花している。けれども、そのような内から外へと、広がり展開する「意志」は、画家としての小林良一さんの画家としての誠実な「意志」の力であり、同時に絵画そのものが持つ「絵画の意志」とでも言うべきものではないだろうか。そのような「意志」が、今回90年代から近作へと絵画が並べられたことによっていみじくも明らかにされてしまっていると思う。厳しくも、祝福された、成果の提示となっている。「画家の意志」と「絵画の意志」が網のように結び合う「意志の絵画」として、この展覧会を軸として、小林作品の今後のさらなる「意志」の展開が望まれる。
                              2022年6月23日
                                   清水哲朗
<小林良一さんステートメント>

今回、初めて過去の作品と現在のものを同じ空間に展示しました。清水さんの退職記念展ということで、まずその出会いとなった作品がはっきりと分かっていたので、それを基点として展示を考えてみようと思ったのです。それは1994年初めての画廊企画によるヒノギャラリーでの個展でした。その当時、清水さんは美術手帖の「展評」を担当されていて、私の作品を取り上げてくれたのです。当時、面識は無く実際にお会いするのは、2年後の1996年造形大の絵画科に非常勤講師として呼んでいただいた頃かと思います。
また、過去の作品を展示してもいいかなと思えたのは、この美術館のまるで洞窟に降りて行くかのような空間に触発されてのことでもあります。中に入ると現実の時制から解放されるように感じられて、奥のほうの壁に、その出会いとなった大きな作品を重しとして、そして新しい作品を2点、対面となる位置に展示して、全体を考えていこうと思いました。約30年間の制作から作品を選ぶ作業は、あらためて変化の道筋を浮かび上がらせることになりました。1990年代中頃は、地と図が入れ替わりながら画面のどの部分にも同等の労力が払われ進行していくものでした。必然的に画面に残る色彩は2色となっていきます。2000年頃より、どうしても同じようになってしまう画面に、もっと複数の色彩が残るようにしたいと思いましたが、なかなか上手く行かず、実際に色彩が複数見えてくるまでに10年以上を要したのです。何故こんなにも時間がかかってしまったのか、よく分かりませんが、変化が成った今、それに要した時間を取り戻すつもりで制作をしたいなどと思ってしまいます。絵画の内容とは関係のないことですが、どんな動機も制作を進める力になればと思うこの頃です。
今回の展示は想像していたよりも、とても大きな節目を感じることになりました。清水さん、ありがとうございます。


開催期間

2022年5月10日~2022年7月1日


休館日

日曜日・6月27日(月)


時間

10:00 〜 16:30


入場料

無料


会場

東京造形大学附属美術館、ZOKEIギャラリー、CSギャラリー、10号館CS-PLAZA吹き抜け空間内、10号館横芝生


会場住所

東京都八王子宇津貫町1556 東京造形大学<構内>