「危機の(ない)」時代のパサージュ・パルタージュ

清水哲朗
絵画専攻領域 非常勤講師
他、7名
<「2Ps」展通信 - その4 >
現在開催中の「『危機の(ない)』時代のパサージュ・パルタージュ」展、10号館横芝生上作品「清水哲朗と一緒に石を集め、彼は靴を脱ぎ、石の上を歩いた」について出品作家、秋山果凜より作家ステートメントが寄せられましたので、以下掲載します。同作品は、6/25(土)までご覧になれます。秋山さんのステートメントとともに是非ご鑑賞ください。
<秋山果凜さん作家ステートメント>
『清水哲朗と一緒に石を集め、彼は靴を脱ぎ、石の上を歩いた』についての物語
この作品は、清水哲朗氏だけの舞台である。
5月21日、雨が一度止んだ午後。青い衣装を身に纏った清水哲朗氏が一人、ゆったりと芝生に向かって歩いてきた。私は芝生に広がった不規則な白い平面から目を離し、「清水先生、あの裏山の方へ石を一緒に拾いに行きましょう。」と言った。そうして数時間程、私たちは多くの様々な石を集めては洗った。清水哲朗氏は「私たちがやっていることは、つげ義春の『石を売る』のようだね。」と笑っていた。しかし私には、石で開業をしようとする気は一切なかった。何故ならば私は、芝生に広がる白い平面に石を投げつけたかったからである。私は正直に「いいえ、清水先生。この石は投げる為に集めたのです。」と白状し「清水先生も一緒に投げる為の石でもあるのです。」と付け加えた。
清水哲朗氏は、石を投げる時でさえ言葉を絶やすことはなかった。「次は放物線を描くように。 皮肉なことに私たちが今やっている行為が戦争では役に立ってしまったんだ。」「次は重力に沿って。その次は、逆重力。」「最後は最大の愛を込めて。」二人で最大の愛を込めて石を投げると、 私の石の方が清水哲朗氏が投げた石よりも遥か遠くの方へと飛んでいった。「なんて大きな愛なんだ!」と清水哲朗氏は驚いていた。「大きいのではないのです!重いのです!」と私は叫んだ。 「先生も私のように、もう一度投げてみてください。」私は手元に残った僅かな石を清水哲朗氏に渡した。しかし二度目の石も、あまり遠くには飛ばなかった。
そうして出来上がったのが、清水哲朗氏が彼自身の中で『石を売る』という行為から始めた、 放物線戦争、自然摂理、そして私の愛の力を真似た《白い舞台》である。舞台が完成したのならば、清水哲朗氏はそこで踊らなければいけない。まずは私が先陣を切り、靴を脱ぎ、投げつけた石の上を歩いた。雨が降っていたので、舞台へ上がるとすぐに足が濡れた。私の行為を真似るように、清水哲朗氏も靴を脱ぎ石の上を歩いた。全ては真似ごと。申楽である。
鑑賞者の皆様には是非、清水哲朗氏の踊りの痕跡、もしくは正に目の前で繰り広げられている一度きりの踊りを御覧頂きたい。私には、青い衣装を身に纏いながら踊る清水哲朗氏が、確かに見えるのだ。
秋山果凜
2022.6.14
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<情報告知> !!
秋山果凜さんを含め、7名の出品作家、及び本展企画清水哲朗による「パネルディスカッション」が、長井美冬彩さんの司会・進行により、明日6月18日(土)、13:00より東京造形大学4号館4-A教室で開催されます。皆様、是非「パネルディスカッション」の前に各会場の展示をご覧になり、会場4-A教室へご来場ください。皆様のご来場を心よりお待ち申し上げております。よろしくお願いいたします。
清水哲朗
開催期間
2022年5月10日~2022年7月1日
休館日
日曜日・6月27日(月)
時間
10:00 〜 16:30
入場料
無料
会場
東京造形大学附属美術館、ZOKEIギャラリー、CSギャラリー、10号館CS-PLAZA吹き抜け空間内、10号館横芝生
会場住所
東京都八王子宇津貫町1556 東京造形大学<構内>