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学生・関係者の活動 詳細

2Ps - 「危機の(ない)」時代のパサージュ・パルタージュ


 

清水哲朗
絵画専攻領域 非常勤講師

他、7名


 宇津貫町に大学が移転し、開館以来永年にわたって親しまれてきた、通称「マンズー美術館 <正式名称:東京造形大学附属美術館(横山記念マンズー美術館)>」について、本展出品作松本春崇氏による「縛り」プロジェクトが、展覧会初日5月23日(月)、多くの方の参加により実現しました。現在も「縛られた」状態は継続し、雨、風に打たれながらも、日々変化をし、美しい姿を構内の空間に放っています。以下、今回のプロジェクトについて松本春崇さんによる作家ステートメントをご紹介します。並びに、館内入り口ガラス壁面後方に展示された、松本さんによる展示作品に関するステートメントもご紹介します。これらの魅力あるステートメントをお読みになり、残りの会期で、松本さんの「縛り」プロジェクトの意義、館内展示作品を、どうぞゆっくりご鑑賞ください。

<「縛り」プロジェクトに関するステートメント>

「美術館」と家縛りプロジェクト

 あるとき家々の玄関前に新聞を十字に縛ってあるのを見て、新聞が紐で四分割され、その縛り方が家ごとに違っていることに気づきとても興味が生まれました。
 そこで思ったのは、家の前に縛られおかれた新聞の姿はその家の美学が浸透していて、それは祖先から脈々と受け継がれたいわば「家庭の美学」「家族の美学」と言えるものなのではないか。また、縛られて四分割されていることは、以前から私が使っている「4」という数と関連があり、十字に縛った材料は、まさに縄文とつながりのある素材「ひもや縄」です。私は、そこに作品化できる可能性を強く感じ「家縛りプロジェクト」をスタートさせました。

家縛りプロジェクトは、五・七・五の十七音で表現する俳句のように、集まった人たちに「家」を十字に縦横四分割する、好みの形にする、というルールで家を縛っていただき、記録を残すというアートプロジェクトです。縛る人たちの価値観や美学は、縄や縄の形に反映され、その家の異なりや隠されたものが現れてきます。
 「家」は、住まい、守り、道具、建築物であると共に、さまざまなメタファーとしても存在しています。例えば国家や思想、大学、美術館、肉体や精神、記号、宇宙、細胞、その他ひょっとしたらすべてのもののメタファーと考えられる可能性があると私は思っています。
例えば「美術館」はその仕組みも家族に近く、ミッションや美学があり、建築物や、家族的な共同体があります。

 今回、東京造形大学附属美術館を縛ることになり、私は、美術館の家族的な存在である藤井匡館長、門馬英美学芸員、企画者の清水哲朗氏と話し合いを重ね、縛る縄はどのようなものがよいか、どのように縛るかなど皆さんのご希望をお聞きしました。
この美術館は、基本設計を白井晟一がおこない、磯崎新がその基本設計を取り込んで作られた後世に残る歴史的建築です。多くの関連本にも目を通し、その中に東京造形大学の設立者、桑沢洋子がバウハウスから刺激を受け作った流れが、美術館のデザインに含まれていないか確認したのですがそれは見つからなかったので、桑沢洋子が考えた大学のミッションの流れをシンプルに取り込む形で、彼女が考えた赤・青・緑の3色を元に縄を作り、貴重な建築物に負担をかけないよう縛ることにしました。
 屋上には上がれないという制約がありましたので、今回は変則的に十字の形を建物の前面に作っています。

私は新しい縄文的表現を目指していますが、例えばDNAや脳神経、超弦理論のラインや紐、フェルト、捻じれ、縄のイメージは縄文的表現を拡張したものとして考えています。
また、私を延々と悩ましている四つについては、もはや私の理解の範疇を超えているので説明はできないと思っています。例えば哲学者グレアム・ハーマンは『四方対象』のなかで四は二つの二元論を交差させたものであり、「四は哲学における強力な数である」と語っていますが、そのことと、人の手足の数や東西南北がなぜ同じ四つであるのかをロジカルに結びつける答えを私が見つけることができないからです。
                                                       松本春崇

<館内入り口ガラス壁面後方に展示された、松本さんによる展示作品に関するステートメント>

「縄文鏡格コードカラー絵画(Jomon Mirror Grid Code-Color Painting)」について

 私は、「四つ主義絵画(4ism Painting)」という絵画を制作していますが、今回はそのなかの、ある平面イメージをその鏡像のグリッドによって四分割し、ひもや縄と四色の絵の具で描いた「縄文鏡格コードカラー絵画(Jomon Mirror Grid Code-Color Painting)」をご紹介します。
 この作品は、例えば方形のアクリル板のような透明な指示体に何かを描いた絵画の中心から任意の幅の十字形(格子)を切りだし、その十字の部分を左右反転させて元の十字形の位置に置いたようなイメージになっています。
 つまり、切り取られた十字形に描かれている反転したイメージは縦軸で回転させた回転軸を持つイメージとなるので、この絵画は中心点と中心軸を縦に持つ絶対直線を含み、また反転する鏡像のぴったりとした重ね合わせによる平面への視線の垂直性により概念的な絵画の平面性を担保していると私は考えています。
 加えて、画面には縄や縄状のもので描いた「縄の痕跡による表現」を残しています。縄の痕跡を残す手法は古くからあり、日本においては12,000年ほど前から縄文土器などに使われていますが、縄の痕跡による表現を踏襲することにより「縄文鏡格コードカラー絵画」は、縄文的表現を継承するスタイルとなります。
 「縄文鏡格コードカラー絵画」は、近現代の欧米中心主義的な芸術やその理論を圧縮し、そこにできた場所に新しい領域を開く試みです。

 今回マレービッチをモチーフとして制作をしたのは、東京造形大学がもともと桑沢洋子によってバウハウスを意識した美術大学を作るというコンセプトから設立されたことによります。なぜならマレービッチとバウハウスとの関係が深く、また、マレービッチの出身地が、現在、ロシアによる侵攻を受けているウクライナの首都キーウであり、当時マレービッチがスターリン政権下のソ連から表現をはく奪され、弾圧されたことなどを思い、東京造形大学の歴史と世界の大きな変わり目の交点に添える芸術作品として、また、マレービッチへのオマージュとして制作しました。
 作品タイトルを「ちょっとマレービッチ un peu Malevich」としたのは、かつてピカソがマチス風のグレーっぽい絵を描いたときに「un peu Matiss」とメモ書きしてあったのを思い出したからです。
 私の絵画作品も誰かの作品の踏襲とそれっぽいということを大切にしてゆこうと考えています。なぜなら文字のように反転させると読めなくなるようなものは正像と鏡像の抽象度に差が出るので避け、正像か鏡像か区別できない、どこかで見たような曖昧なイメージのほうが絵画として楽しめると考えるからです。(2022年5月)

                                                        松本春崇


開催期間

2022年5月10日~2022年7月1日


休館日

日曜日・6月27日(月)


時間

10:00 〜 16:30


入場料

無料


会場

東京造形大学附属美術館、ZOKEIギャラリー、CSギャラリー、10号館CS-PLAZA吹き抜け空中、10号館横芝生


会場住所

東京都八王子宇津貫町1556 東京造形大学<構内>