美術教育学研究50巻「彫刻家佐藤忠良の教育ー造形指導の意図と授受:インタビューによる質的検討の試みー」

齋藤亜紀
美術II類 1986年度卒業
佐藤忠良は、東京造形大学の建学に携わり、40年余の間、彫刻科で造形を指導しました。その造形指導の意図を明らかにし、それがどのように授受されてきたのか、大学の草創期に佐藤の指導を受け後に彫刻家となった一期生田村史郎氏、笹戸千津子氏をはじめ、大学の節目に在学していた三木俊治氏、小川幸造氏、イタリア在住の杉山功氏にインタビューを行いました。
佐藤忠良は,この大学は具象を学ぶ学校であることを明言し,教育の目標を「高度な精神と技術 」を備えた自律した人間形成と考えていました。表現を試行するために身体を鍛えること,〈自然〉を自分の目と手で捉える訓練をさせることが第一義であると考えました。建学当初,この意図は学生と共に大学の歴史を作って行こうとする情熱によって様々に試行されましたが、人体像を通して写実を学ぶことと〈佐藤の造形〉は混同され,造形指導の本来の意図とは異なり,齟齬を生じさせていきました。〈佐藤の造形〉という表層的な問題と佐藤の造形指導の真の意図を、あらためて再考し議論のきっかけにすることがこの研究の目的です。