北野 謙 展『光を集めるプロジェクト』

北野謙
写真専攻領域 非常勤講師
写真は“光が像を結ぶ”一事にかかっている。
写真家は行為者として明確な主語でコンセプトを立てて作品を制作する。
ところがそれを追求していくと、自分のやったことなのに像が”立ち現れた”としか言いようのない、得体の知れない”淵”に立っているときがある。( 僕はこれを“ゆらぎの淵”とよんでいる。)
例えば、屋根の上に半年間取り付けたカメラを丁寧に取り出し、汚れを落としてフィルムを回収する。現像すると何本かに1本、うっすらと太陽の光跡が写っているものがある。それを丁寧にスキャンしてPhotoshopで調整する。すると見たことのない光跡が浮かぐわっとび上がる。無数の線は、46億年変わらない地球の公転と自転が刻む〈冬至—夏至〉の宇宙的リズムである。
「撮る(能動態)」とも「撮られた(受動態)」とも違う 「現れた」としか言いようのないこの“淵”は、行為なのか状態なのか。「する/される」の関係に集約されない主体と主語。(國分功一郎著『中動態の世界』には言葉の歴史の中で動詞が〈能動態/受動態〉の対立構造になる前の世界について書かれている。)淵への切符(方法)が見つかった時は(少し怖いのだけど)至福である。
そしてそこから見える世界を、写真というメディウムに入れて少しでも持ち帰りたいと思う。
2017年 北野 謙
開催期間
2017年11月25日~2017年12月24日
休館日
月曜休廊
時間
12:00-20:00
入場料
無料
会場
MEM
会場住所
渋谷区恵比寿1-18-4 NADiff A/P/A/T/T 3F