一点消失・中村 宏

中村 宏
絵画専攻領域 客員教授
自らを「絵画者」と名乗る中村宏は、1950年代から今日までおよそ60年にわたり、「モンタージュ絵画」「観念絵画」「タブロオ機械」など独自の方法論を展開、タブローを理論化し、絵画が否定された時代においても揺るぎなく自らの絵画表現を切り開いてきました。このたびの展覧会では、現在展開している「一点消失」シリーズ8点とドローイングを展示いたします。
「一点消失」とは、遠近感を出すための古典的絵画技法の一つです。しかし中村は遠近法としてではなく、技法を“モチーフ”に変換し、絵画のさらなる深化を図ろうとしています。消失点に向かう遠近法の構図を平板なグリッドが覆い、“奥行き”と“平面性”の相反する要素が交錯する多層化したタブローから、鑑賞者との往復運動が生み出されてゆきます。
黄と黒、あるいは赤・黒・白の簡潔な色の組合せで「一点消失」は構成されます。これまでに、赤一色で描かれた「観念絵画」、黄色と黒のストライプで構成される「立入禁止」など、色自体をテーマとした作品が生み出されてきました。黄色と黒のストライプは、駅や踏切などで見かける注意喚起の記号であるにもかかわらず、中村の描く黄色と黒からは、鮮烈な美しさが放たれます。1950年代、街の注意喚起の標識が“白と黒”の組合せから、米軍基地からもたらされたという“黄と黒”に変化し、初めてその色彩に出会ったときの強い衝撃が、タブローから鮮やかに蘇ります。
【関連企画】 アーティストトーク 「 絵画内映画 」
日時:2011年10月15日(土) 14:00-15:30
会場:ギャラリー58 入場無料・予約不要
作品の中に“時間”や“動き”などの映画的要素を、象徴的に数多く組み込んできた中村が、初めて「映画」をキーワードに作品を俯瞰し、映画と絵画について語ります。学生時代、映画監督に憧れた中村は“時間”を描きたいという欲求のもと、絵画を静止画像(=ストップモーション)と捉え、映画技法である「モンタージュ」や、横長の画面、残像、リフレインなどを駆使し、動くことの喚起装置として描いてきました。エイゼンシュテイン『戦艦ポチョムキン』や、黒澤明『羅生門』 ほか映画の中の“ワンシーン”をとり上げながら、映画と絵画について掘り下げてゆきます。
開催期間
2011年10月3日~2011年10月22日
休館日
10月9日(日),10(月・祝),16日(日)
時間
12:00-19:00(最終日17:00)
オープニングパーティー 3日(月)17:00-19:00
入場料
無料
会場
Gallery-58
会場住所
中央区銀座4-4-13 琉映ビル4F