村松俊夫個展「凍れる、重力。」- Frozen Gravity -

村松俊夫
教養科目 非常勤講師
古くから聴覚を媒介とする芸術(たとえば音楽)と視覚に訴える芸術(たとえば建築や絵画、彫刻)は、似通った構成要素を持っているものとして語られることが多い。明治期に日本美術を評価したアメリカ人美術史家フェノロサは、奈良薬師寺東塔の屋根と裳階が交互に繰返すリズムを見て「凍れる音楽である」と言った。そもそもこの一文に類する台詞は、さかのぼればゲーテに代表されるドイツロマン主義の思想家の文章に多く見られる。いずれにせよこの詩的な表現は、多くの哲学者や美学者の琴線にふれ、様々な言説の中に繰り返し取り上げられてきている。現代に至っても、著名な日本人作曲家が音楽と建築との間に同種の類縁関係を見ている。「前進感覚(時間)」と「上下関係(重力)」である。音楽では、ある音の次に別の音が鳴り、次々と音が流れ出て、次第に重なってゆく。音楽における時間的な「重奏性」は、空間芸術であれば下層が上層をうけとめる「上下関係」すなわち「重層性」であろう。空間芸術とは、人間と重力との闘いの表現であり、造形の秩序の根本には重力の秩序、それをいかに制御するかという力学の法則がある。そして、空間芸術を観る者はその大きさに圧倒されるのみならず、その重力との闘いを追体験することに感動を覚えるのだと……。
そこにはあきらかに、聴覚芸術と視覚芸術という異なった2つのジャンルを結びつける「感覚の互換性」ともいうべきものが存在している。両者に通底する要素のひとつ「重なり合い(重奏性・重層性)」は、視覚芸術においては「重力」である。もし、それを抽出して硬質なオブジェに凍らせてみたら…。そんな思いが作品なりました。やはり、そのたたずまいは美しいです。
レセプションパーティー:2015年8月28日(金)18:00〜
※ 冷たいお飲物と軽食を用意しております。
お時間がありましたらぜひお越しください。
開催期間
2015年8月24日~2015年9月18日
休館日
土曜・日曜・祝日は休廊
時間
8:30~20:00(最終日:16:00まで)
入場料
入場無料
会場
天王洲セントラルタワー・アートホール
会場住所
品川区東品川2-2-24