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東京造形大学 絵画専攻領域 見える化プロジェクト
「もの・かたり」 – 手繰りよせることばを超えて –


(左上から右)菊池遼『void #35』2018、Φ80cm、パネルにアクリル絵具、油性インク|小山友也『The shape of the future hand_artists』2017、サイズ可変|白井忠俊『カカメヒラク(アケ)』2015 、 310×310cm|(左下から右)宮崎勇次郎『トラと朝日』2017、194×130.3cm、キャンバスにアクリル|原田郁『HOME-WHITE CUBE 2018 』2018、162x162cm、キャンバスにアクリル絵の具|中山晃子『Still life』2018、15×15×18cm、ろ紙、Alive Painting後の廃液|下山健太郎『Seeing far Away #2』2017、116×116cm、キャンパスにアクリルと鉛筆、photo by Takashi Fujikawa

開催概要

主催   東京造形大学 美術学科 絵画専攻領域
展覧会名 「もの・かたりー手繰りよせることばを超えてー」
会場   ヒルサイドフォーラム(東京都渋谷区猿楽町18-8)
会期  2019年3月6日(水)~3月17日(日)|オープニングレセプション・パフォーマンス 3月9日(土)
     平日 12:00-19:00、土日祝 11:00-19:00 *最終日16:30 終了(会期中無休)
入場料  無料
出品作家 菊池遼、小山友也、下山健太郎、白井忠俊、中山晃子、原田郁、宮崎勇次郎(五十音順)
展覧会キュレーション
     水田紗弥子(インディペンデントキューレーター)
実行委員 生嶋順理 教授、母袋俊也 教授、宮崎勇次郎 助教(東京造形大学 美術学科 絵画専攻領域)
     山越紀子(プロジェクトマネジメント)

展覧会趣旨

誰がどんな「もの」をどのように「かたる」のか。本展示ではテキストや文字に象られていないが「ものがたり」を感じさせるそれぞれのアーティストの作品について、「もの・かたり」を起点に考えたい。筋道のある物語を解体し「もの・かたり」にすることで、既成の物語の概念を超えた「もの・かたり」の表象を見出し作品の理解を深める機会となれば幸いである。
物語の「物(もの)」は、単に物質を意味しているのではない。物質を超え、あるときは人の心を意味するし、身体、魂などをも包括する。日本語には「もののあはれ」「もののけ」「ものになる」「ものぐるおしい」など「もの」には様々な意味がある。その実体のない曖昧な「もの」をどのように「かたる」のかは、長く続くどんよりした雲が覆ったままのような世界の状況を、あるいは個人の抗いようのない現実を編み直す方法の一つとして表現者が日々考えるところだろう。「かたり」には、筋道の通らない「話」を
「語る」ことで整え固める意味がある。そこには同時に「騙る」というフィクションも含まれ、現実と想像が、過去と未来が自由に繋がっていく。「もの」を「かたる」ことは、偶然を形にする力であり、関係のなさそうな事物を接続することでもある。
言語を操る唯一の生物である人類は、言語を獲得してのちさまざまな「ものがたり」を紡いできた。それはつまり人間とはなぜ存在するのかを考えるために、神話、民話、昔話、ファンタジー、メルヘンなど様々な形式で「ものがたり」が存在すると言ってもいいだろう。現代における視覚芸術の「ものがたり」は、個人と社会、記憶と現在をさまざまに結びつけながら言葉を超え象られていく。
「もの」と「かたり」をめぐる思考と作品を通じて、東京造形大学の絵画専攻領域出身者の多様な表現の一端に触れ、その拡がりを感じてもらいたい。
水田紗弥子

作家紹介

白井忠俊

firstoil.s1.bindsite.jp

1972年 東京都生まれ。千葉県在住。
1996年 東京造形大学 絵画専攻領域 卒業、1997年 東京造形大学 絵画専攻領域 研究課程 修了。

主な展覧会に、SUSAKI MACHIKADO GALLERY (高知、2016)、PETIT SOL GALLERIE SOL(東京、2015)、ART ICHIHARA 2015
AUTUMN(千葉、2015)、第10回 造形現代芸術家展「生れ出づる先に」(東京、2014)、ART HOUSE ASOHBARA VALLEY(千葉、2013)、LIXIL GALLERY(東京、2012)、ART PROGRAM 青梅 8th(東京、2010)、GALLERY NATSUKA(東京、2006)他。
第16回 岡本太郎現代芸術賞(2013)入選、東京造形大学研究生修了作品展 ZOKEI賞(1997)受賞。

白井の作品は縄文時代まで遡り、過去から現在という時間軸ではない、循環する時間軸を蛇や縄を象り表している。
円環型の絵画「円筒絵画」や屏風状の絵画、連続した三角紋様を組み合わせた作品など、絵画形式そのものにも疑問を呈し、
さまざまなスタイルで作品を展開している。その形状やサイズにより一瞥では全てを把握することができず、鑑賞者は様々な角度から、あるいは作品の周りを歩きながら作品に向き合うこととなる。縄文土器や巨木を思わせる「円筒絵画」の形状やマチエールは、時間が循環しながらも、たった一度限りにしかやってこない永劫回帰の感覚を想起させる。(水田)


「どんな答えを欲しているのか忘れてしまった」2010 、194×230×230cm
 

宮崎勇次郎

miyazakiyujiro.wixsite.com/yujiro-works/about
1977年 大分県生まれ。東京在住。
2001年 東京造形大学 美術I類卒業。

近年の主な個展に、ループホール(東京、2016)、ギャラリーヒラミネトーキョー(東京、2015)、現代ハイツギャラリーDEN
(東京、2014)、スイッチポイント(東京、2013)、ミヅマアクション(東京、2011)。グループ展に、おおいたトイレンナーレ
(大分、2015)、「Look East! -Japanese Contemporary Art-」 (ギルマンバラックス、シンガポール、2013)、「第16回 岡本太郎現代芸術賞」展(東京、2013)、ジャラパゴス展 三菱地所アルティアム(福岡、2011)、「七問 -現代日本の若手アーティストたち」 Mizuma & One Gallery (北京、2011)等。
主な受賞歴にアートブラザー大分受賞(2007)、トーキョーワンダーウォール 大賞(2005)等。

現実とは思えない景色を見たときに口にする「絵のような風景」を、感覚や思考、ユーモアと共に絵画にする宮崎。。距離や心境、時間の進行や状況が、本来の距離やサイズと関係なく一枚の絵に「風景」として表れる。筋道の決まった物語を描いているようでありながら、登場人物が自由に動き回りプロットが書き換えられていく小説のように、偶然の出来事の断片が画面を更新し続ける。そのため個人の記憶、昔話や民話の要素や、過去の事件や現代をとりまく社会環境などが融合し拡大していく。その根底には、宮崎の実家の銭湯のペンキ絵があるだろう。富士山や観光地などの図像が自由に多視点で組み合わされ、理想の風景が描かれた銭湯の背景画のような、現実と想像の世界が同時に存在する光景を創り出している。(水田)


『想像の泉』2017年 194×130.3cm キャンバスにアクリル
 

原田郁

ikuharada.com
1982年 山形県生まれ。埼玉県在住。
2007年 東京造形大学大学院 美術専攻領域 絵画科修了。

近年の主な個展に「NEW DIMENSIONS」(アートフロントギャラリー、東京、2018)、「IKU HARADA -circle-」(Gallery
Pepin 、埼玉、2017)、「My Garden」(代官山蔦屋書店 Anjin、東京、2015)「遠い国 近い国 – 真昼のパースペクティブ-」
(アートフロントギャラリー、東京、2015)、「子供の情景-知らない国々と人々について-」(Lamp harajuku B1Gallery、東京、
2012)、グループ展に「ブレイク前夜~次世代の芸術家たち~」(Bunkamura Gallery、東京、2018)、「北参道オルタナティヴ・ファイナル」(プロジェクト・カバタ主催、東京、2017)、「A plus viewing 01 ~For the city of heritage 美術家からの提案
~」(国登録有形文化財 旧田中家住宅、埼玉、2016)、「Art Stage Singapore」(the Marina Bay Sands Convention and Exhibition Center 、シンガポール、2014)、「BORDERS」 (HARMAS GALLERY、東京、2013)等。
主な受賞歴に、群馬青年ビエンナーレ2010 入選 (群馬県立近代美術館、群馬) GEISAI#14 リキテックス賞(東京ビックサイト、東京、2010 )等。

原田郁は本人が「inner space」と呼ぶ架空の世界をパソコン上で3Dで制作し、その世界の風景をキャンバスに描いている。森や湖、住居やギャラリーなどが存在するこの仮想世界は、原田の故郷の地形や景観、あるいは自身の思い出などの現実の要素も含んでいる。現実と想像が融合した平穏な世界は、原田自身が歩き回り、ズームしたり切り取られたりされ、絵画作品として体感することができる。拡張し続けるバーチャルな世界に思いを馳せながら、絵画作品を体感する経験は新たに紡がれる現代版の絵巻物のようである。(水田)


『 Inner space 』 (detail) update 2018.7 © Iku Harada
 

中山晃子

akiko.co.jp
988年 埼玉県生まれ。神奈川県在住。
2012年 東京造形大学 造形学部美術学科 絵画専攻領域 卒業、2014年 東京造形大学 造形学部 美術研究領域 修士課程修了。
近年の個展・ソロパフォーマンスに「Biennale Nemo」(LE CENTQUATRE-PARIS、パリ、2018 )、「Still Life」(Art & Space
cococara、東京、2018)、「EXTREAM QUIET VILLAGE 装飾は流転する」(東京都庭園美術館、東京、2017)、「DLECTRICITY ART + LIGHT FESTIVAL」(Cathedral Church of St. Paul、デトロイト、2017)、「TEDxHaneda -Borderless-」(羽田空港国際線ターミナル TIAT SKY HALL、東京、2015)。グループ展・パフォーマンスに「Rock Werchter」(ブリュッセル、2018)、
「ELECTRIC NIGHTS 」(Booze Cooperativa、アテネ、2017)、「OF」(Indie Art Hall Gong、ソウル、2017)、「筑波国際野外美術展 」(筑波、2016)、「アルスエレクトロニカフェスティバル ” RADICAL ATOMS ” and the alchemists of our time」(リンツ、2016 )等。
主な受賞歴に、Official Selection WomenCineMakers(WomenCineMakers ビエンナーレ、2018)、 高松メディアアート祭 -メディアアート紀元前- 審査員特別賞 宇川直宏賞(2015)等。

色彩と流動の持つエネルギーを用い、様々な素材を反応させることで生きている絵を出現させる中山。絶えず変容していく「Alive
Painting」シリーズや、その排液を濾過させるプロセスを可視化し定着させる「Still Life」シリーズなど、パフォーマティブな要素の強い絵画は常に生成され続ける。様々なメディウムや色彩が渾然となり、生き生きと変化していく作品は、即興的な詩のようでもある。鑑賞者はこの詩的な風景に、自己や生物、自然などを投影させながら導かれ入り込んでいく。(水田)


「Alive Painting Solo Performance」(青山スパイラルでのパフォーマンス風景)2017、Photo: Haruka Akagi
 

小山友也

yuyakoyama.tumblr.com
1989年 埼玉県生まれ。東京在住。
2015年 東京造形大学大学院 美術研究領域 修了。

近年の展覧会に、「Münster Sculpture Project in Sagamihara – さがみはら野外彫刻展2018-」( 神奈川、2018)
「COUNTERWEIGHT」(Open letter、東京、2017)、「Remaining Methods」(アーツ千代田3331、東京、2017)、「Politics of Space」(statements、東京、2016)、「六分の一で考える」(blanclass、神奈川、2016)、「PARTY」(art center
ongoing、東京、2016)、「Unusualness Makes Sense」(チェンマイ大学アートセンター、2016)、「鉄道芸術祭vol.5 -」
(アートエリアB1、大阪、2015)等。

映像や写真、インスタレーションを組み合わせ、社会の構造や、当たり前とされる習慣などに介入し、嵌入することで現実の違和を引き出す小山。自身の違和感を自身から引き剥がして語ることで、今ある状況との関係性が新たに紡ぎ出される。人になにかを伝えたり、体験を共有するための前提が少しずつずれていって、当たり前のように成り立っていた状況をもう一度再考することで作品が進行していく。音漏れするヘッドホンからのノイズでダンスをしたり、他者や環境によって自己が決まり動かされていく作品などを通じ、鑑賞者はその背景にある社会の構造に目を向けることになる。(水田)


『Listening together』2017、サイズ可変
 

下山健太郎

shimoyamakentaro.com
1990年 東京都生まれ。東京在住。
2014年 東京造形大学 美術学科絵画専攻領域 卒業、2016年 東京造形大学大学院 美術研究領域 修了。

近年の主な個展に「seeing far away」(BRAVENESS CONTEMPORARY、神奈川、2017)、グループ展に「朝飲んだ水、濁り泡立つ川と透き通った黄金のおしっこ。乾いた堅い毛に跨がる夕方、砂の上では土亀がすべる」(西郷山公園、東京、2018)、「CU- SeeMe vol,1 」(CSギャラリー、東京、2018)、「rgb+vol.9」(zokeiギャラリー、東京、2017)、「rgb+vol.8」(zokeiギャラリー、東京、2016)、「夏の採光」(木島平村中町展示館、長野、2016)、「跳ねる土」(HIGURE17-15cas、東京、2014)、
「turner museum vol.1」(ターナーギャラリー、東京、2012)、「 KIRITUMA」(キリツマ 、東京、2011)、 「猿の絵」(ギャラリー石、東京、2010)等。
レジデンスに「アーティストインレジデンス木島平」(長野、2016)

下山は軽やかで朗らかな胎内の記憶まで遡り、その感覚を絵画や立体作品として表出させている。窓や双眼鏡という現実越しに見える光や水、森、空や雲などのモチーフは壮大なテーマを扱っているにもかかわらず、軽やかで物質感から解き放たれているように見える。それは丸めてどこにでも移動しやすくするために、木枠に張り込むのではなく布に直接描く絵画のスタイルにも通ずるところである。布に描かれた絵画作品は、ギャラリー空間だけでなく、屋外やプライベートな室内にも等価に設置される。作品を通じて得られる重力や物への拘りからの解放感は、鑑賞者に連綿とつづく時間や生命、粒子とも波とも捉えられる光の普遍性などへの気づきを与える。(水田)


  『芝の緑 -Green of the Lawn-』2017、112.5×173.0 cm、『紫と木 -Purple and a Tree-』2017、112.0×37.5 cm、共にキャンパスにアクリルと鉛筆
Photo by Koyuki Tayama
 

菊池遼

kikuchiryo.com
1991年 青森県生まれ。埼玉県在住。
2015年 東京造形大学 造形学部美術学科 絵画専攻領域 卒業、2017年 東京造形大学大学院 造形研究科 美術専攻領域 修了。
近年の主な個展に「無/(分節)」(Frantic Gallery、東京、2017)、グループ展に「派生する幹 -DERIVATION from the TRUNK-」 (SEZON ART GALLERY、東京、2017)、「UNKNOWNS 2016」(藍画廊、東京)、「Mポリフォニー2016 -原(形/
型)-」(東京造形大学、東京)、アートプログラム青梅(cafe ころん、東京、2015)、第二回CAF賞作品展(アーツ千代田 3331、東京、2015)、TURNER AWARD 2014 入選・入賞者展(turner gallery、東京、2015)等。
受賞歴に ZOKEI賞(修了制作優秀賞、2017)、「第二回CAF賞」 入選(2015)、ZOKEI賞(卒業制作優 秀賞、2015)、「TURNER AWARD 2014」未来賞(2014)等。

すでに存在する風景や言語で規定された事物を、「文節」し提示するという菊池。日本語を解体しながら理解するように、既知のイメージやありふれた風景における解像度や視点をずらし、作品を通じて人間の知覚に接近する。物をどう捉え描くかを常に問いながら、さまざまな制作スタイルにより存在の本質を問い直す平面作品を制作している。制作方法や提示の仕方はさまざまにあるが、「idea」シリーズでは、洞窟壁画をなぞり輪郭線を描くことで、人類最古の芸術から表現行為の本質と構造を見出し、再解釈を与えている。(水田)


『void #24』2017、90×90cm、パネルにアクリル絵具
 

ゲストキュレーター

水田紗弥子

littlebarrel.net
1981年 東京都生まれ。
2004年 東京造形大学 造形学部美術学科 比較造形専攻 卒業、2006年 武蔵野美術大学大学院 芸術文化政策コース修了。
トーキョーワンダーサイト勤務を経て、現代美術に関する展覧会、フェスティバル、アートアワードなどの企画・運営、コーディネートに携わる。企画した主な展覧会に「Alterspace – 変化する、仮設のアート・スペース」(アサヒ・アートスクエア、2014)、「皮膚と地図:4名のアーティストによる身体と知覚への試み」(愛知芸術センター、2010)などがある。2014年に株式会社Little Barrelを設立。2016年より東京造形大学非常勤講師。
展覧会企画 参考文献
河合隼雄『物語を生きるー今は昔、昔は今』(岩波書店、2016年)坂部恵『かたり』(弘文堂、1990年)、梅原猛『もののかたり』淡交社、1995年
 

東京造形大学 絵画専攻領域 見える化プロジェクトについて

プロジェクト背景

2016年に創立50周年を迎えた東京造形大学は、2013年に絵画・彫刻専攻が中心となり活動を続ける卒業生を取り上げた展覧会・出版・アーカイビングプロジェクト「Creative Spiral Project(CSP)」を立ち上げ、2016年には50周年を記念した大規模な展覧会並びにイベントも開催致しました。そしてその教育研究活動のより幅広い周知を目指し、2017年には「見える化」プロジェクトを新たに始動、その一つの形として今年度、『絵画』を主軸とした展覧会+シンポジウムを開催致します。

プロジェクト趣旨

近年、世界の美術動向の一つとして、アメリカでの「具体」や「もの派」への関心の高まりをあげることができます。また、アートシーンでも1960年代の「ミニマル・アート」や1970年代の「プロセス・アート」におけるような「物そのもの」への関わり方から大きな変化が見受けられます。「物そのもの」の「扱い方」に重きを置いたかつての方法とはかなり異なった動向です。物の「実在論」に重きを置いた、現代の先進的な思想界での議論が明らかにしているように、20世紀までのあまりに「人間中心的」な「主観」に偏重した「物の見方」、「物の扱い方」への「反省」が促されています。今世界で最も注目され、同時代に問題提起的な課題を発信し続けている、ガブリエル・オロツコやピエール・ユイグ、またフランシス・アリスや川俣正などの作品を見ても、そこでは「人間」と「物(気候、自然、宇宙、人間を取りまくあらゆる環境を含め)」が対等に扱われています。むしろ「物」の「存在」としての在り方が尊重されようとしています。そしてその対等な関係、尊重の眼差しの中で、積極的な「人間」と「物」との「対話(ダイアローグ)」が図られようとしています。あるいは、その「対話(ダイアローグ)」のプロセスそのものが作品化されようとしていると言っても良いでしょう。本学においても「もの派」の一人として1970年代初頭から活躍を続け、1972年から1992年まで教職にあった成田克彦先生の活動がありました。作品<スミ>にはじまり、後期の天上からや地霊的な力を呼び出すような作品群への変貌。成田先生は、「物」に依拠しながらも、「物」の神秘的な深層に届いてゆこうと挑戦を繰り返されていました。そこでの「物」との果敢な関わり、「対話(ダイアローグ)」を通して、作品制作を展開されました。そこから自在に、生命的な力に満たされた、独自の造形言語としての作品を創造され続けてゆきました。
本絵画専攻領域も時の流れの中、時代とアートのあるべき姿、求められるべき価値の探求を行おうとしています。普遍的な価値を見定めながらも、時代の動向に鋭敏に対応、変容しようと努力を続けている最中です。専攻領域の構成についても、今あるべき姿を求め、議論を進行しています。本学が校是とする異なる価値が、互いの個性を認め合いながら積極的に関わることによって生み出される「創造的螺旋運動(クリエイティヴ・スパイラル)」。この運動は、本絵画専攻領域の今ある姿を示し、同時に今後のあるべき姿を牽引するまさに原動力ともいうべきものです。そしてそれは、「創造的な対話(ダイアローグ)」の在りようそのものと言えるものでもあります。多様な価値の交叉、混交、そこからの、クリエイティヴなスパイラルとしての価値の生成の場、そのプロセス。このことこそ、本専攻領域が目指す教育の場に他なりません。以上のような場の要請により、今般「見える化」プロジェクトの一環として、本展を開催いたしたいと思います。
2018年7月 東京造形大学 美術学科 絵画専攻領域
 
 

お問合せ

東京造形大学絵画準備室
zokei2019.kaiga@gmail.com
042-637-8424
展覧会担当・広報関連
山越紀子|BÜRO A(iNTOUCH JAPAN LLC)
noriko@intouchjapan.com