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2014年度入学式 有吉学長による式辞

434名の学部入学生の皆さん、7名の学部編入生の皆さん、67名の大学院入学生の皆さん、本日は入学おめでとうございます。東京造形大学の教職員を代表し、皆様を心から歓迎いたします。また、ご家族ならびに関係者のみなさまにも、心からお祝いを申し上げます。

いま皆さんは、これから始まる新たな生活に、大きな希望をいだいていることでしょう。また、少しばかりの不安を感じていらっしゃる方もいるかもしれません。
きょうは、新たに東京造形大学の一員となった皆さんに対し、本学の建学の精神や、教育の特長についてお話しさせていただきますので、これから本学で学ぶイメージを大いに膨らませていただければと思います。

東京造形大学は、創立者桑澤洋子先生によって1966年に創立されました。現在では全国各地に様々な「造形大学」がありますが、日本で初めて「造形」ということばを大学名に用いたのは、私たち東京造形大学です。そこには、本学の創立当時の文化状況の中で、デザインや美術の将来を、造形という観点から総合的に捉えるべきであるとした、創立者の進取の気概が浮かび上がってきます。進取の気概とは、それまでの考え方にとらわれずに、率先して新しいことに取り組むという姿勢です。

創立者桑澤洋子先生は、本学創立時に次のような言葉を残しています。
「デザインおよび美術の意味は、単なる自己表現というより、社会に責任をとる表現であり、デザイナーや美術家は、現代の社会や産業がはらむ矛盾を解明する文明的な使命をもたければなりません。」
東京造形大学は、こうした創立者の教育思想と進取の気概を継承し、デザインや美術の創作活動を広く社会との関係から捉える教育研究に取り組んできました。そして、建学の精神を「社会をつくり出す創造的な造形活動の探究と実践」という言葉で表しています。「社会をつくり出す創造的な造形活動の探究と実践」。少し大げさに思われるかもしれませんが、私たち東京造形大学は、デザインや美術といった創造活動を、たんに視覚的な形や物を作ることではなく、時代の精神や社会の創造に深く結び付いたものとして捉えています。皆さんも、「社会をつくり出す」という言葉をとおして、社会が誰かによってつくられているのではなく、皆さんを含む、すべての人々の意識や行動によって、日々つくり出されているのだという意識を持って欲しいと思います。そして、皆さんが、これからデザインや美術の学修をとおして身に付けていく、発想力や実践力が、これからの社会をつくり出す重要なはたらきを持つのだというイメージを描いてみて欲しいと思います。

さて、こうした建学の精神とともに、東京造形大学は「専門性」・「総合性」・「社会性」という3つの観点を教育の目標としています。
「専門性」、つまり専門能力の追求と獲得ですが、これは美術系大学での最大の目標です。それぞれの専門領域には、それぞれの考え方や技術というものがあります。皆さんは、そうした思考や技術を極めていくことをとおして、物事がもっている奥行きと深さに出会っていくはずです。
しかし一方で、今日デザインや美術の領域での専門性を極めていくためには、デザインや美術がこれまでどのような歴史をもって展開してきたのかということをはじめ、文化全般について幅広い知識を身に付けていくことも必要です。また、今と言う時代がどのような特徴をもっているのかを知っておく必要もあると言えます。こうした広い視野からデザインや美術を捉えていくのが、「総合性」という第二の観点です。
さらに、デザインや美術とは決してそれ自体独立した領域としてあるのではなく、つねに社会との関係の中で展開しているというのが、「社会性」という第3の観点です。時代や社会が大きく変化している現在、デザインや美術のまわりにはどのような事柄が隣接し、広がっているのでしょうか。私たちはそうした時代や社会の課題を認識したうえで、これからのデザインや美術の在り方を考えていく必要があるのだと思います。本学の大学院では、社会と連携した特徴的な授業を展開しています。学部でも様々な学外との連携プログラムを行っています。それらをとおして、いまの社会を感じとっていってください。


最後にクリエイティブ・スパイラルについてお話ししておきましょう。東京造形大学のロゴマークは、イオニア スパイラル〈Ionia spiral〉というらせんを描く際の補助線をもとにデザインされています。私たちは、植物が上方にらせんを描きながら成長していく過程になぞらえて、無限に上昇するらせんをクリエイティブ・スパイラル、創造的ならせんと呼び、これを本学が目指す目標の象徴としています。本学にはCSという文字を用いた施設名称がいっぱいあります。学園祭もCS祭と呼んでいます。このCSは、クリエイティブ・スパイラルの略称です。
私自身は、現代美術の領域で発表活動を行ってきた人間ですが、その中で実感したことがあります。創造行為には、日々の地味な実践の蓄積が必要です。その中で、いつまでも同じところをグルグルと回っているに過ぎないのではないかと感じることがあるのですが、ふと気付くと、いつの間にか自分が立っているステージが上がっているのです。そして一度ステージが上がると、前のステージに落ちることはないのです。これが上昇する創造的らせん、クリエイティブ・スパイラルの実際なのではないかと思っています。
東京造形大学は、決して大きな大学ではありませんが、少人数制による親身な指導体制を特長とし、これまで社会のさまざまな分野で、新たな価値を提案する優れた卒業生を輩出しています。皆さん、本学のこうした学生と教職員との親密な関係の中で、それぞれのクリエイティブ・スパイラルを登って行ってください。

学部入学生の皆さん、4年間の本学での学修と生活は、皆さんが本当の意味で自分を見つけ出していく、大切な時間となっていきます。様々な学修と出会いをとおして、視野を広げ、感性を鍛えていってください。4年後には大きく成長した自分自身に出会えるはずです。
学部編入生の皆さん、他大学で学修してきた内容を、本学の教育環境の中で、いま一度ゆさぶってみてください。必ずや新しい発見があるはずです。それをとおしてこれまでの学修の仕上げと将来の進路を見出して行ってください。
大学院入学生の皆さん、修士課程の2年間は、これまで学修してきた内容を振り返るとともに、新たな経験をとおして、皆さん自身が何のためにどこに向かうのか、その確信をつかむための大切な時間です。社会をつくり出す一員としての自覚を高めていってください。

本日入学されたすべての皆さんが、東京造形大学での学修と生活をとおして、ご自身の将来を切り拓いていくことを願っています。私たち教職員は、全力で皆さんの学修と生活を支援していきたいと思います。いっしょになって、これからの社会をつくり出していきましょう。

以上をもちまして、平成26年度東京造形大学入学式の式辞といたします。
平成26年4月4日
東京造形大学学長 有吉徹