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留学生レポート(佐伯明子)

佐伯明子

領 域 : 彫刻
留学先 : イタリア カラーラ美術学院
期 間 : 2010年2月2日~3月31日
担当教授 : Franco Franchi
研究テーマ : イタリア的色彩感覚による表現


研究概要

【研究内容】

日本とは異なるイタリア独自の色彩感覚を探求し、表現の幅を広げ、作品の深化・向上を目指す。
留学期間が短いことを考慮して、平面作品の制作を主体とする。

【研究方法】

【研究方法】
1.過去のイタリア芸術から学ぶ。
多くの偉大な芸術家達の作品に触れ、色彩や光の取り入れ方を中心とした技法を実際に見て感じて学び吸収する。
2.現代のイタリアから学ぶ。
イタリアの日常的な風景、生活などからイタリア独自の色彩感覚がどこから生まれてきたのかを日常の中から探る。
3.イタリアから日本を知る。
イタリア人の文化、日常、人間関係の中に身を置くことで、改めて自らの在り方、作品の方向性を見つめ直し、外から見つめ直すことによって日本をより深く理解し、今後の制作活動に繋げていきたい。


研究成果

saheki01カッラーラの町は山と海に挟まれた場所にあり、大理石の山がシンボルとしてそびえ立っています。かつて、ミケランジェロが自身の彫刻制作のために採掘に通った場所としても有名です。
ミケランジェロがきっかけで美術の道に導かれた私にとって、この地で学びを受けられたことは大変な喜びでありました。
町のあちこちに大理石彫刻のスタジオがあったり、ルネッサンス期の彫刻やレリーフが残されています。そのため、町にはアーティストや芸術関係者が多く住んでいることも特徴的です。
(図) アカデミア本校舎正面の大通り



担当教授であるフランキ教授が指導をされている校舎は、パドゥーラと呼ばれ、町の中心から歩いて10分弱の場所にあり、私も主にそこで授業を受けました。
学生は大学生から大学院生まで同じ場所で制作しており、造形大学と授業システムで大きく異なる点は、科を超えて授業を選択できるシステムであるため、絵画の学生が彫刻の授業を受けていたり、彫刻の学生も絵画のクラスを受けることが出来ます。
そのため、彫刻科でありながら、平面制作を中心とした私の研究内容も容易に理解を得ることができ、受け入れて頂きました。

パドゥーラの校舎では、主に表で大理石による石彫制作が行われ、1階では塑像や石膏による彫刻制作、2階のスタジオでヌードデッサンの授業が行われていました。
授業日数は日本に比べると大変少なく、本格的に制作に励んでいる彫刻学生の多くは、学外にアトリエを借り、そこで主に制作をしている状況にありました。

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(左)ヌードデッサンの授業教室パドゥーラ内  (右)フランキ教授彫刻技法指導風景

学生と教授との距離は近く、昼食はパドゥーラ内にあるキッチンで、数人の学生が調理したものを教授を含めてみんなで食べるというアットホームな雰囲気があります。これは、造形大学の彫刻科と共通するものを感じました。
特に、フランキ教授は日本への興味を強く持っている方で、学生にも日本の造形大学行きを強く薦めていることも印象的でした。

私の研修期間はちょうど、学期の切り替わりにあたり、ほとんど授業が受けられない期間がありました。しかし、他の学生達との交流が深まり、3月に卒業を迎える大学院生のアトリエに卒業制作の手伝いに行ったり、アトリエを見学しに行ったりする中で、技法の違いやまたイタリアの学生の制作環境を知る良い機会となりました。

saheki03授業外の時間を使ってイタリア国内の美術館を回り、多くの本物の作品を目にすることが出来たことも大きな成果でした。
時には、アカデミアの仲間と一緒に美術館を回ったりし、素材や技法について語り合い、良い刺激になりました。
東京造形大学での4年間の学生生活を通して自分の作品の方向性が見えてつつある今だからこそ、素晴らしい作品や仲間と出会えたこの体験は、より意味のあるものになったことを感じています。
(右図)アカデミア裏手通りにあるかつてミケランジェロが滞在したアパート


留学先指導教員による指導内容

saheki04フランキ教授と相談した結果、ヌードデッサンの授業を主に受けることになりました。
フランキ教授もヌードデッサンの制作をしていたため、授業中生徒に混じって教授自身もクロッキーされることもよくあり、教授の制作過程を見ることができ、勉強になりました。デッサンの制作スタイル、モデルさんに至るまで多くの点で日本で受けてきたヌードデッサンの授業とは異なり、興味深いものでした。
作品に関して、教授からもまた他の生徒からも評価を頂き、国は違えど芸術に国境はないこと、今までやってきたことは場所は変われど無駄ではなかったことを知ることが出来たことは、私にとって価値観を新たにするかけがえのない貴重な体験となりました。
(図)ヌードデッサン授業での制作作品



また、授業外の時間を使って自主制作も進めました。素描をはじめとして主にコンテ、パステルを用い、イタリアに来てから吸収した技法を取り入れながら制作に向かいました。はじまりは、イタリア的色彩感覚に着目しての制作でしたが、段々と日本人としての自分のアイデンティティーに意識が向き、西洋と東洋を融合した作品へと方向が変わっていったのは自分自身にとっても興味深い変化でした。

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自主制作作品


留学中に、特に印象に残った点および反省点

カッラーラは観光地ではないため、日本で現地の情報を得ることはなかなか出来ませんでした。しかし、幸運なことにカッラーラで彫刻家として活動されている造形大学の卒業生の方々と、現地でご縁に恵まれ、留学中親身に助けて頂きました。

また、聞いてはいましたが現地では想像していた以上に英語が通じないのも事実でした。おそらく日本以上に通用しないかもしれない・・という印象を受けました。しかし、私のフラットメートであったスペイン人の学生は英語が話せ、またアカデミアの学生も20〜30人に居れば2,3人は英語を話せる、という状況だったので、必要があるときは彼らが通訳をして助けてくれました。
イタリア語もしくは英語をある程度話せることが、アカデミアへの留学を有意義になものに出来るかどうかに大きく影響するということは確かに言えると思います。
私自身、英語が多少なりとも話せたことで、友人や仲間を得ることができ、イタリアの生活に入り込み交流を深めることができました。
もし英語を全く話せなかったことを想像すると、難しい状況にあったと感じます。
しかし、イタリア語しか話さない生徒も多く、またフランキ教授はイタリア語しか話されないため、コミュニケーションを取るのに苦労しました。そのため、日本に居るときにもっとイタリア語の勉強をしておけば良かった、というのが反省点です。

この留学を通して、本気でアーティストを目指す仲間と国を超えて友情を育むことが出来たのは、私にとって大きな宝であり、貴重な経験でありました。
また、このカッラーラの地は私自身10歳の頃から憧れ続けた地であり、ミケランジェロがかつて身を置いた地で、空気を感じながら大理石の山のふもとで時を過ごせたことは、私の人生にとって大きな転機、忘れられない時間となりました。
このような機会を与えて頂いたことを、東京造形大学に心より感謝申し上げます。有難うございました。