外に出る造形生

KOSHIKI ART PROJECT 2009

今回の造形生:KOSHIKI ART PROJECT 2009参加者(絵画専攻有志)
(代表して青木真莉子さん、新井李奈さん、今井貴広さん)

今年の8月に、鹿児島県甑島列島上甑島一帯にて「甑島(こしきじま)アートプロジェクト」が開催されました。
『島外のアーティストとの交流を手段として、島に伝わる文化、暮らし、自然の豊かさなど、島に「あるもの」の素晴らしさを島民の方々に今一度見直してもらうきっかけを創ること。 また、同時に島外の人にも甑島の魅力を伝えていくこと。』を目的としたこのプロジェクトに、本学の絵画専攻からも多くの在学生や卒業生がアーティストとして参加されました!
8月の1ヶ月間島内の空き家に滞在し制作活動を行い、出来上がった作品は、8月の最終週から島内の空き地・空き家・空き倉庫を使って展示されました。
今回は参加者の中から、代表で青木真莉子さん(絵画専攻4年)、新井李奈さん(絵画専攻3年)、今井貴広さん(絵画専攻2年)に甑島での様々なお話を伺いました。

甑島での作品作り

—まずはじめに、実際に甑島(こしきじま)に行く前に、『甑島アートプロジェクト』について考えていたことや、どのようにプロジェクトに臨みたいと思っていたのかなどを教えて下さい。青木さんいかがでしょうか?

青木 「私はこのプロジェクトに、普段東京(本土)でつくる作家が、アートと触れ合う機会の少ない島民の目前でつくり、見せる行為をする中で、【島民と作家】【作家と島】【島と島民】、それぞれの間で新しい関係が生まれ、それが良い方向へと成長することに繋げる活動と考えていました。行く前の気持ちは、島での非日常的な制作の中で見えることに対する期待と、島やプロジェクトの事前情報が少なく色々と不安がありました。 けれど、自分と島がある瞬間上手く共鳴したら何か凄いものが出来るのではないかと思い、強く意志を持ってこのプロジェクトに臨みました。」

-甑島では、普段と全く異なる環境での作品制作でしたが、それはいかがでしたか?(島ではそれぞれが空き家や車庫などの場所を借りて制作をする)

青木 「私は制作場所が外の開けっ放しの車庫だったので、とても暑かったです。 けれどそのほうがやりやすかったです。自分の周りに緑があるほうが制作意欲が湧きました。描きたいものがすぐ近くにあったほうが描きやすかったんです。島での制作は画材などの面では不自由なこともありましたが、描くことに関してはすごくやりやすかったです。」

新井 「周りの環境が違うので隣りが違う感じでした。私の作品は、周りの環境と馴染むものではなく、異空間を造り出すというものなので環境は大きかったです。自然の中に、全く別の世界が造られるということでは面白かったです。」

今井 「僕は制作場所が選べる、ということがとても新鮮でした。」

-今井君はどんな場所を選んだんですか?そしてその場所を選んだ理由も教えて下さい。

今井「自分の制作テーマに関わってくるんですが、制作場所は中途半端な場所がいいなと思っていました。町から少し離れているけど、でも道が通ってて、でも森の中で……というような。なので、今回はそのような場所を制作場所に選びました。町から離れてるけど遠くもない、すごく微妙な場所で制作と展示をしたんですが、人が全然来ないような場所でした。」

青木「今井君の制作場所は本当に人があまり来ないようなところだったよね笑」

今井「そうなんです。だから展示場所は変えようかとも思ったんです。(人が来ないので)でも、 見てもらう、見てもらわないはどうでもいいかなと思って…。どうでもいいというか、ここまで見に来てくれる人が見てくれればいいかなぁと。わざわざここまで人が来ることが大事なのかなと思いました。来るのに少し汗をかいてもらいたくて、そうすれば僕がここを選んだ意味がなんとなく解かってもらえるんじゃないかなと・・・。だから展示もそのまま、制作場所で行いました。」

-なるほど。展示ということについても改めて考えさせられる環境だったんですね。制作場所がそのままそれぞれの展示場所となるんですか?

全員 「それは人それぞれですね。私達はたまたま制作場所がそのまま展示場所になったケースです。」

-甑島では、地元の方との交流もたくさんあったと思うのですが、それについてはどうでしたか?

全員「すごく楽しかったです!!」
今井「島ではみんながお互いの顔を知っているから、誰にでもあいさつをする習慣があるんです。だから自分も知らない人に対してあいさつをするんですけど、島を出てこっちに帰ってきてからも、その習慣がしばらく抜けなかったです。誰にで対しても会釈するくせが残ってました。」
青木「住んでる人がお互いをしっかり意識し合って生活しているのを感じました。こっちでは他人は関係ない感じだけど、島ではすごく相手の存在が大きいんです。」
新井「私は制作場所がちょうど大通りに面していたので、すごくたくさんの人と話せました。」

-人と人との関わりが強く、東京などとは違う感じですね!
では甑島での制作や展示で、大変だったことや苦労したことなどはありますか?

青木 「私は制作場所探しがすごく大変でした。島に行ってみて、初めてどんなところなのか知って、どれが空き家かもわからないし、それが大変でした。」

今井 「僕は制作場所探しは、平嶺さんに要望を言ったらいい場所を紹介してもらえてそこに決まりました。すんなり決まった感じです。島では大変だったことはたくさんあったので、一つをあげて何とは言えない感じなのですが、終わってみたら苦労が全部楽しかったです。」

青木 「本当に大変なことは多かったです。タフじゃないとムリだなぁと思いました。」

今井 「不自由なことが多いので、人に頼ったり、聞くことがたくさんあって、またそこで島の人とコミュニケーションがあり仲良くなっていきました。」

新井 「私は使う画材や、材料が切れた時が大変でした。東京に注文して送ってもらって、お金と時間がすごくかかりました;」

-なるほど。制作場所や材料等、普段は当たり前に考えていたことが、そうではないことも多かったんですね。
私たちは美術について学んでいる立場ですが、島では、普段アートについて関心を持っていない方もいたかと思います。社会の中での美術というものについて、改めて感じたことはありますか?

青木 「価値観が全然違う、ということを感じました。美術をやっている立場としてはショックを受ける場面もあったのですが、普段どっぷり美術の世界に浸かっていたことで、わかってはいたことを忘れてしまっていたんだなあと感じさせられました。それを再確認出来たことはとても良い経験になりました。ただ、理解をしてもらえない部分はあるけれど、そのような人も積極的に作品や展示を見ようとしてくれていて、それはとても良かったです。」

今井 「わからないことがあったら、『これは何??どうゆうことなの?』ってすぐに聞いてくれて、こちらにとても興味をもってくれていました。知ろうとする意欲がすごかったです。そういうことで充分なのではと感じました。」

新井 「島では、木を切る人は大工さん。色を塗る人はペンキ屋さん。というように職業としてやることが分かれているので、私達のように制作では一人でなんでもやるような人間を驚いていました。絵描きや作家を職業と思っていない部分は感じました。何者なんだろう…というような視線を受けました。笑」

-興味を持って観てもらえるのはとても嬉しいし、すごいことですよね!
学校の中にいると忘れてしまいがちですが、全ての人が美術に関心を持っているわけではないですからね。
作品を展示して、来場者の方の感想や反応はいかがでしたか?

今井 「観に来てくれた人の感想を直接聞く機会はあまり無かったのですが、一緒にプロジェクトに参加した作家の方々に意見を頂く事ができました。色々なことを指摘して頂いたりして、とてもためになりました。」

-学生だけでなく、多くの作家の方も一緒にプロジェクトに参加されていたということですが、実際に活動されている作家の方から頂く意見は本当に貴重ですよね。
では最後に、甑島での体験を通しての全体の感想や、今後の展開について教えて下さい。

新井 「体感することが多くて、それがすごく強い島だなあと感じました。身体で感じることがとても多いです。見るだけではなくて、体全体で受け取ることが大きいです。甑島で受けた様々な感覚が今後活かせるのではないかと思います。」

今井 「まず、自分で何でもやらなくてはならない状況がとてもためになりました。そして島でしか造れないような、普段こっちでは制作出来ないような作品に挑戦出来たことがとても良かったです。それが自分にとってキッカケのようなものになりました。 あと、人が好きになりました。そして、帰れる場所が一つ増えました。」

青木 「向こうに行っている時は、すごく大変なことも多かったけれど、とてもいい経験になりました。私も人が好きになりました。逆に、人がわからなくなった。。というのも少しあるのですが(笑)それと、甑島の豊かな自然が自分にとってすごく大きな影響を与えてくれました。大好きです!今回甑島に行ったことで、それらが制作に必要としているものなんだなあと再確認しました。甑島ををキッカケに制作をどんどん進めて行けそうです。」

<インタビューを終えて>
三人からお話を伺い、いつもとは全く異なる環境の中で、すごい体験と経験をしてきたんだなあと感じました。多くの人と関わり、豊な自然の中で一ヶ月制作、展示を行った三人からはとてもたくましい印象を受けました。
これらの甑島での体験や経験が、どのように作品へと続いていくのかとても楽しみです!!
プロジェクトの運営をされている平嶺さん、今回インタビューをさせて頂いた青木さん、新井さん、今井君、お忙しい中ご協力頂き本当にありがとうございました!!

KOSHIKI ART PROJECT 2009の公式ブログ
http://koshikiart.chesuto.jp/

KOSHIKI ART PROJECT
KOSHIKI ART PROJECT

今井貴広さん、青木真莉子さん、新井李奈さん
左から 新井李奈さん、青木真莉子さん、今井貴広さん

<甑島アートプロジェクト参加者>

【在校生】

  • 宮尾塊多
  • 森健太郎
  • 新井李奈
  • 清原亮
  • 福地立憲
  • 別府正一郎
  • 青木真莉子
  • 児玉真仁
  • 今井貴広
  • 明石貴寛

【卒業生】

  • 平嶺林太郎
  • 大久保視具
  • 大野智史
  • 佐藤修康
  • 鈴木知佳

新井李奈さんの作品
新井さんの展示作品

青木真莉子さんの作品
青木さんの展示作品

今井貴広さんの作品
今井さんの展示作品

制作風景
家も全て作品になっていきます!


制作風景
島のこども達も一緒に制作中◎

制作風景

制作風景
普段の生活場所もアート作品に!