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留学生レポート(鈴木美葉)

鈴木美葉

領 域 : 美術研究領域
留学先 : オランダ ロッテルダム芸術アカデミー
期 間 : 2010年2月5日~7月9日
担当教授 : Renee Turnur
研究テーマ(タイトル) : モルフェをテーマにした作品への取り組み


研究概要

グループ講評

滞在中にグループ講評は3回ありました。
WdKAではファインアートの留学生だけで15名程いたので、グループ講評は常に留学生だけで行われていました。短期だったので現地の学生とは違うカリキュラムが組まれていたようです。
初めのグループ講評では各自作品のデータを持ち寄り自分の作品について各々がしゃべり、主に教員が批評し他に意見があれば生徒も発言するというものでした。最初はとても緊張したのと、言語に対してのコンプレックスから、準備したテキストを読むことしくらいしかできなく、とても腑甲斐ない気持ちになったのを覚えています。
グループ講評で感じたことは、作品自体の質は変わらないのですが、他の学生は自分をプロデュースする能力が高く作品を画像にした時の見せ方や、作品を言語化することにとても慣れているように感じました。
最後の講評では自分の作品を展示し、自分の作品が留学中にどのように発展したのかプレゼンしました。
実物の作品が前にあったので話しやすかったのと、完璧ではないながら、質問にもどうにか答えられたように思います。なんとか無事に終わった安堵感はありましたが、経験を積んで度胸もっとつけなければならいないと強く感じました。

自主制作

ロッテルダムでの生活は、とてもシンプルなものでした。学校がある日はなるべくスタジオで1日制作をしていました。
留学生が学校全体の人数の6分の1程在籍していることがスタンダードな学校なので、特に留学生用のスタジオのスペースなどが特別に設けてなくて最初は戸惑いましたが、とにかく制作を自分の日常の行為にしたいという気持ちがあったので、早い段階で現地の学生と交渉して自分のスペースを確保しました。
中には十分なスペースが確保できず、家でドローイングなどの小作品を制作している学生もいました。
気になったことは、スタジオが絵画や彫刻を制作するのに十分な設備が整っておらず、そのことに対して現地の学生が特に不満を持っている印象がなかったことです。理由としては、絵画や彫刻を制作する学生が少ないことや、学外に自分のスタジオを持っている学生が多いことなどがあげられます。
このことで、学校に求める条件はそれぞれ異なるのだと思ったことと、今いる環境以外のことも見て知っておくことの大切さを感じました。

旅行

ベルリン、パリ、ロンドン、ブリュセエル、アントワープ
週末や1週間程度の休みの時に、主に他の国の美術館やギャラリーを見て回っていました。特に印象に残っているのがベルリンで訪れた植物園です。寒い季節に行ったというのも相まって、巨大な熱帯植物やサボテンがぎっしりと並んでいる光景に圧倒され、体温が一気に上昇したのを覚えています。忘れられない経験です。
またパリはWdKAで知り合ったフランス人の子が、エコールデボザールの学生だったので、調度ボザールのオープンキャンパスの時期に合わせて訪れることができました。他の国の学校の環境や学生の作品にも興味があったので、とてもラッキーでした。ボザールはパリの町中にあって環境がとてもよくムードがあり、アトリエも広く差し込む光がとてもキレイだったのが印象的でした。また学校全体の志気がとても高かったのと、環境の良さが作品のスケール感や豊かさに現れているように感じました。
オランダは九州程の大きさしかないので、日帰りで大体の町を訪れることができました。ゴッホ美術館やマウリッツ美術館には、何度も足を運びました。とくに嬉しかったことが、滞在中にエルミタージュ美術館の別館がアムステルダムにできて、マチスのダンスを見られたことです。本物の作品に触れられる経験は、何にも変えがたい喜びです。

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研究成果

滞在中はペイティングをメインに制作しました。
以前から変わらず、生き物が目には見えない速度で変身、変容することをテーマに作品に取り組みました。
特に重きを置いて、絵画の中で試みようとしていたことが、ものの反復とパターンについてです。
セラミックの作品はドローイングをするような感覚で制作しました。

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留学先指導教員による指導内容

留学生担当の指導教員は2名程決められていましたが、自分でアポイントメントを取れば、どの教員とも話をすることができました。
指導教員とはメールのやり取りで面談のアポイントメントを取り、主に個別面談という形式で意見やアドバイスをもらっていました。
内容は制作の経過を話し、それに対して出来上がった作品について自分でどう思うかなどを細かく聞かれました。
教員は、私が今まで継続してやっている作品のコンセプトをある程度把握した上で、作品をよりいいものにするための提案や、意見を私が選んだり考えたりできるような形で指導してくれました。
つたいない英語でのコミュニケーションは、もちろんとても大変だったし相手を困らせることも度々ありました。
しかし当たり前のことかも知れませんが、目の前に作品があれば作品を通して伝わるものが何かしらあるし、目の前に作品がなければ自信を持って自分の事を話すこともできなかったと後々思いました。
作品が持つパワーみたいなものを実感しつつも、自分の英語力に対する嫌悪感は否めませんでした。

滞在期間中はペインティングを中心に制作していたのですが、それと平行して陶器を支持体にした作品も作っていました。
セラミックの教員は主に素材の扱い方など、技術の話を中心に授業の合間をぬって指導してくれました。
授業とは関係なく、個人の制作でワークショップを利用している学生があまりいなかったので、とても歓迎されていたように思います。後々考えると、逆に歓迎されていると思い込んで積極的にワークショップを自分で利用しやすい場にしていたようにも思います。
セラミックは、これまでに扱ったことのない素材だったので自分のものにするには時間が少々足りなかったように感じますが、新しい素材と向き合っている時は、とても濃い集中力の中で制作が行われたように思います。


留学中に、特に印象に残った点および反省点

留学中に気がついたことは、とにかく制作が自分の生活の中心になっていると、それ以外のこともうまく捗るということです。
このことは、日本にいる時にはあまり意識しなかったことのように思います。
ロッテルダムで過ごした5ヶ月間は、制作と生活がとても密な関係にあったので、双方がバランスよく保たれていたように思います。
また自分の作品が他の国の人にどのように受け止められているかまでは明確に解らなかったけれども、自分のアイデンティティーを感じる瞬間がなん度かあったので、そのことはとても大切なことのように思いました。

ロッテルダムはコンパクトに作られた町だったのでとても生活がしやすく、寮から学校へは自転車で10分かからない程度で、その間にスーパーマーケットと画材屋がそれぞれ2件ありました。
交通の便もとてもよく、学校へは地下鉄やトラムを使って通うこともできました。
またミュージアムパークと呼ばれるものが町の中心にあり、現代美術館、建築美術館、自然史博物館などを含めた4つの美術館が隣接しているエリアや、いくつかのギャラリーが集まっている通りもありました。決して都会ではなかったけれども、美術に触れられる環境がとても充実していたように思います。
また週2回学校の前の広場でオープンマーケットが開かれていたので、休み時間に食料品や日用雑貨を買いに行くこともありました。マーケットでは特に野菜、フルーツ、花が安く、種類も豊富だったので充実した食事を取ることができたと思います。特にヘリングという生のニシンの塩漬けは絶品でした。

また日本のような緩やかな季節の移り変わりとは違い、ヨーロッパの冬は暗く深々と厳しい寒さが長く続くので、住んでいる人々が太陽を強く恋しがります。私も彼らと同じように太陽を待ち望み、太陽を楽しみました。
国特有の気候や時間の流れを肌で感じ、自然に順応し楽しんでいたように思います。
またサマータイムに入ると夜10時近くまで明るく、町は外で遅くまで遊ぶ子供や、オープンカフェでお酒を飲み談笑する人々で溢れます。この光景は私にとって初めての体験だったので、なんだかとてもワクワクしたし、このお日様は長い寒さを乗り切った人々にとってのつかの間のご褒美なんだとしみじみ感じました。

最後に、大学側が与えて下さった、当たり前に学校に通えて寮で生活できた環境にとても感謝しています。今回の経験を糧に、次は自力で行ってやるぞという思いが芽生えました。本当にありがとうございました。