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留学生レポート(茅野真由子)

茅野真由子

領 域 : グラフィックデザイン
留学先 : イギリス サウサンプトン大学ウィンチェスター美術学校
期 間 : 2009年1月26日~5月6日
担当教授 : Noami Depeza-Purvis
研究テーマ : 自己研究と人間性の追求としてのアート


日程

2/2 レクリエーション、課題発表(大雪のため休校)
2/3 レクリエーション、課題発表
課題:「リフレクティブジャーナル」
    自分自身の興味関心を、単なるスクラップではなく、
    自己追及のためのジャーナルとしてビジュアライズされた1冊のファイルにまとめる。
課題:「サプリメント」
    各種雑誌のおまけ小冊子をインデザインを用いてデザインする。
2/9 ゲストレクチャー
2/12 講評
2/16 ゲストレクチャー、課題発表
課題:「ジーニアスロジ」
    魂の宿る場所を身近な場所に見出し、それを観察し、アートとして表現する。
2/23 ゲストレクチャー
2/26 講評
3/2 ゲストレクチャー、課題発表
課題:「ホームワーク」
    イースターホリデー中の自由課題
イースターホリデー
4/16講評


留学先指導教員による指導内容

すべて英語による指導のため、自分の会話能力が通用するのか不安でしたが、留学生の受け入れが多い大学ということもあり、教授陣はみなわかりやすい英語で話してくれ、こちらの拙い英語にも、真剣に耳を傾けてくれて、当初抱いていた会話能力の不安はすぐに吹き飛びました。
こちらの大学では、課題発表のあと、講評までは授業が少なく、自由度がとても高い構成になっていましたが、学生はいつでも教授と対話することができ、作品の相談にも、留学生、在学生の区別をせずに快くのってくれました。  私が個人的にアドバイスをいただいたことは、作品を作る際のエスキースを大切にすること、結果のみを提示するだけではなく、その過程として、くだらないと思うアイデアも大切に書き留めて、ファイリングしておくこと。これは留学して一番勉強になったことと言ってもよいかもしれません。学校で授業を受けていると、最終的に形が残るもののクオリティーにばかり気を取られて、途中経過で発生したバグを隠蔽したいというような気持が働きがちですが、WSAで出会った学生がみな、丁寧に自分のアイデア、エスキスを課題ごとにファイリングしているのを見て、自分自身が作品に向き合う姿勢を変えてくれました。
特に印象に残った指導は、私が「ジーニアスロジ」という課題で、タトゥーをした裸婦の絵を描いた時に「あなたの作品は俗悪を推奨しているようで、不愉快に感じる」と言われたことでした。私は「人間として純粋な美しさを表現するためにタトゥーをいれる覚悟や信念、後悔の念、開き直り、良いも悪いも総合した人間らしさを表したいと思った」と反論しましたが、あまり聞き入れてはくれませんでした。東京造形大学でも、留学先でも、教授にここまではっきりと否定されたことがなかったので、びっくりしました。しかし、それによって教授のNaomiを嫌いになることはなく、逆に交換留学生だからといって遠慮することなく、一人の人間として正直な意見をぶつけ、議論してくれたNaomiに感謝しました。
他にも学校の設備をめいっぱい利用するように言ってもらえたり、私が観るべき作家の作品や、アニメーション作品を教えてくれたりと、学生と教授が近しい位置にある大学だという印象を受けました。
やはり周りの欧米人と比べると、日本人は無口に写るらしく、ディスカッションの際にも、特別気にかけて話題を振ってくれていたようにおもいます。パソコンの扱い方等のレクチャーの際も、「OK?」と必ず聞いてくれました。総じて、指導教官に恵まれた留学であったと言えると思います。  


留学中に、特に印象に残った点および反省点

「リフレクティブジャーナル」

自分の興味関心を深く掘り下げるための課題。
スクラップした様々なビジュアルに思考を継ぎ足し、自分自身の反射としてのビジュアルブック化を目指す。この課題は私の留学が始まってから終わるまで、ずっと続く長期的な課題でした。帰国の期日の問題で、最後の講評には出ることができなかったのが残念でした。私は「Ssexuality」をテーマに「ハイヒール」「食」「タトゥー」「髪」などのビジュアルを集め、それについて考察する文章を書くとともに、それを日記とする旅行記を3冊作りました。

「サプリメント」

インデザインを使うための練習課題。各種雑誌のおまけ冊子を作る課題。
この課題で、私は環境問題、特にレッドデータアニマルについて言及し、文章は富裕層のインテリ向けの政治雑誌のおまけということを考え、絶滅危惧種の沿革や判断基準などについて詳しく書き、それについて子供と話し合ってもらうため、挿絵は白抜きでカラフルな塗り絵風の絶滅危惧動物の絵を描きました。

「ジーニアスロジ」

魂の宿る場所について考察し、アート作品にする課題。
この課題で私は、人間の肉体、存在、精神性について考察したいと思い、イギリスにきてからずっと気になっていた「タトゥーをした女性」についての作品を作ろうと思いました。タトゥーをしている友達にインタビューをしたり、日本でのタトゥーの在り方、社会的背景などをみんなに発表して意見を募ったり、雑誌で見つけたトップモデルのタトゥー姿などをスクラップしたりしました。
そうして自分の行き着いた結論として、タトゥーは確かに俗悪かもしれないし、後悔したり肌を傷つけて痛い思いをするかもしれないけれど、それはそれで人間らしくていいじゃないか、という思いに至り、その気持ちをB2ボード3枚にわたる一連のイラストにまとめました。

「自由課題」

イースターホリデー期間中の自由課題。
在校生はほとんどがイースター中の旅行についてのレポートや、写真の発表が多かったように思いました。
私は休み中、中学校の図書館を利用して、東京造形大学での卒業制作に使えそうな資料をスクラップブックにして提出しました。


留学中に、特に印象に残った点および反省点

「芸は身を助ける」ということを身をもって体験できたというのが、一番の収穫であったように思います。英語は小さい頃から慣れ親しんできましたし、留学前も困らない程度にはしてここうと、勉強をしていき、会話能力に不安があるとはいっても、空港、ホテル、教授、大学の職員とは会話ができたので、これなら3カ月、全く問題はない…そう思っていました。
 しかし、いざハウスメイトと雑談をしようと思うと、形式的な文法や模範的会話になら自信があったのに、友人たちの崩した話しことば、スラングが全く聞き取れず、沈黙してしまうことも数多くありました。
 そんな時、自分を助けてくれたのが、絵を描く能力でした。お気に入りのブランドの話、料理の話、好きな作家、最近自分が描いたもの等々。とにかく会話の中でことばにつまった時はキッチンにあるメモとペンでお互い即興でイラストを描いて、それで大抵うまく理解しあえることができました。
 言葉や体格、思想は違えど、世界中で芸術に力を注ぎ、それを青春としている仲間がいる。たとえことばが通じなくても、絵を描くことで通じ合える。そんな確信が、私にまた新たな視点で世界を見せてくれ、考え方を変えてくれたように思います。
 私の滞在していたフラットには、私以外には、日本人はもちろん、アジア人すらいなくて、イギリス人ばかりの中で3カ月半を過ごしました。もともと仲のいいメンバーが集まっていたようで、無口な日本人の私は得体が知れない存在であったことは間違いなく、彼らの中に入りこむ余地はなさそうでした。でも、すぐにハウスメイト達は私を遊び仲間に入れてくれて、お互いの作品を見せあったり、機材を貸しあったり、とてもよい関係を築くことができました。これも私たちに「芸術」という共通点があってこそのような気がします。
滞在中、休みが多い印象を受けました。実際、3カ月半の滞在のうち、1カ月はイースターホリデー。そのほかの平日も課題発表とゲストレクチャー、相談、講評の他は授業がなく、その分街や人を観察したり、図書館で様々な現代美術家の作品を検索したり、雑誌を読んだり、写真を撮ったりと、有効に過ごすことができたと思います。
 今回の留学で、私は自分自身が何をしたいのか、知り合いも誰もいない環境で自分は何をすることができるのか等、自分自身を見つめ直す機会を与えられたことに深く感謝しております。留学を通して、本当にたくさんの人と出会い、刺激を受け、大変ありがたく思います。この経験は、この先私が作品を作るにあたり、なくてはならないかけがえのないもになることと思いまます。本当にありがとうございました。